航空写真を拡大してよーく見たら手を振ってる人になりたいんだよね、わたし。
高山なおみさんの料理本。
『自炊。何にしようか。』
これを見つけて、久しぶりに料理本を見ようと思ったのだ。
昔は随分と料理本を買った。
お菓子のも料理のも。写真がきれいなのも、美味しそうなのもエッセイが載ってるのも。とにかく大好きだった。
結婚する時に基本の料理のこまごまが書かれた手帖のような料理本を母が持たせてくれた。たぶんそれから料理本は買ってないかもしれない。
あ、子供の離乳食本くらいは買ったかな。
でも、あれからの私って、なにせ作るものがもう決まったものばかりになってしまったから。
20、30代の頃の自分は料理が大好きな気がしてた。でも、今となってはそうでもなかったのかな…とも思う。結婚してからはどこの誰もが突入する、よくある怒涛の日常となり、料理を作るのに疲れてしまった。新しいメニューに挑む気力もなくなってしまった。
料理本をたくさん読んでいた頃の私も若かったが、高山さんもまた若かった。レシピも上手な文章も飛び跳ねていた。
その彼女も今はパートナーさんと離れ、一人で神戸で暮らしてるという。その話を聞いて驚いた。昔の友達が離婚してたと、だいぶ経ってから偶然聞かされたみたいだった。
◎パスタのこと
一人暮らしをする前には、手軽にできるからパスタの出番が多くなりそうだなと思っていたのだけど、ちがった。スパゲティーはなんかさびしい。ひとりでパスタの長いのを食べるのはわびしい。その点、ショートパスタはいい。フォークで突きさす食べ方が、子どもじみているからかな。
『自炊。何にしようか。』p186
久しぶりに開く料理本は文字も大きくなっている。
そうだよなぁ。若い子は料理本なんて見やしない。ネットで検索して動画で見る。
料理本は、老眼になって小さい文字が大変な人達用だ。
調理する手元の写真も年季の入った筋ばった女の人の手だ。今の高山さんの手。
そしてレシピは一人分。
レシピ間に挟んである文章も一人の文章。もう飛び跳ねてはいなかった。
みんな年月を生きた、と思った。
でも、今のレシピを食べて今を生きているのがいいな。手間も量も多くは要らなくて、自分が機嫌よく居られる分だけ。私はこの料理本の何かを作りたいなと思った。自分が機嫌よく居られるように。
そうだな…。
私がもっと年とって一人で暮らすことになって、知り合いも少なくなっちゃって、どこか知らない場所で誰も私がいるなんて知らない所で暮らすことになったら…。
航空写真で街を空から写真撮って、ごちゃごちゃした屋根しか写ってないように見えるのだけど、よーく拡大して見たら屋上で上を見上げてニコニコと手を振ってるような人が写ってる。そんなふうにわたし、歳をとって一人で暮らしてても生きたいんだよね。
「うわーい、ここにいるよー」って、誰も気づかないだろうけど、ニコニコ手を振っている人になりたいんだよね。
そんなことを高山さんの料理本を見て思った。
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