「会って話さないと仕事はできない」は正しいか
テレワークがもう避けられない時代が来ていますが、
一度ここで立ち止まって考えてみましょう。
「仕事は職場で会って話さないとできない」は一般的な事実なのか
あるいは、一部に限られる事実なのか、ということです。
もし一般的な事実であるならば、テレワークは企業としてできる限り回避すべき事態ということになります。
(製造業などのことは考えていません。出てこないと物が作れない、ということは当たり前なので触れません)
1.この時代にわざわざ会うメリット
色々な方が情報を発信しておりましたが、一定の共通点としてみられるのは以下の情報でした。
・営業では大事
この時代も、やはり直接会って話すことは、良い印象を得るためには
重要なのだと、多くの方が仰っています
・初対面でも大事
初対面の場合も、"雰囲気"は対面の方が伝わりやすい、ようです
・所属感、安心感が得られる
対面のコミュニケーションという問題ではなく、
視覚的に所属していることがわかることが安心感につながるようです。
・外見が磨かれる
これは副次的なものです。人と会わなくてはいけないから、
きちんとズボンもはかなくてはいけないとか、そういうことです。
(なぜ人はパンツでzoom会議に参加してしまうのか)
ちなみに、これだと医療もオンラインでできそうですが、オンラインで絶対に失われる情報が以下の3つです。
失われる情報:嗅覚、触覚、味覚
嗅覚と触覚は医療をする上では欠かせないものです。
(味覚は必要ないでしょう、「教授が糖尿病の患者の尿を学生になめさせる」という小話がありますが、普通やりません)
乳幼児の便の匂いで鑑別診断があげられる
糖尿病、肝機能低下、胃腸機能低下などによる独特の匂い
汗ばんでいるか、握雪感などといった触覚
すぐ思いつくだけでも上記のようなものがあげられます。
オンライン診療というのは、こういった制限がある中で行わなければならないので、(特に初診を中心に)簡単に解禁するわけにはいかないのです。
・・・少し話がそれました。
さて、対面で得られるメリットというのは「好感度」とか「安心感」とか
そういったもののようで、情報伝達といった観点から必要、と思っている人はそれほど多くないようです。
2.情報伝達という観点からオンラインはどうか
オンラインだと情報伝達は正しく行うことはできないのでしょうか。
残念ながらこの点については、研究が十分になされているとはいえない状況です。
しかし、杉谷陽子先生が2010年に発表されているものが広く知られているものとなるでしょうか。
杉谷先生は対面・非対面下における情報を、正しく伝達されたか、正しく伝達されたと感じたか、の2点から考察されています。
結論から申し上げると
・対面の方が、「正しく伝達された」と感じ(伝達感)
・非対面の方が、実際に「正しく伝達された」(伝達度)
との結論に至っております。
加えて、感情を伝えるには対面の方が正しく伝わると感じている者が多く、このあたりが完全オンラインを難しくさせている要因の1つと考えられます。
この結果から、
オンライン下において情報共有も含めた業務は十分可能ではあるが、
相手に伝わったか不安な人ほどオンラインに抵抗的になると示唆されます。
会って話さないと伝わったと感じることができずに(本当は伝わっているのに)不安になってしまう。
要するに個人的な要因に帰するわけです。
3.結論
オンライン化はドンススで(どんどん進めて)構わない、ということです。
ただ、研究が十分とも言えない状況でもあり、今後、どこかの研究室が
対面・非対面コミュニケーション下での生産性の違い、といった研究を
されることでしょう。
結果を待ちたいと思います。
(立場と研究費さえあれば、こういった研究は自分でやりたいところですね。)
ということで、各企業様におかれましては、オンラインは対面を代替可能なのか、という議論ではなく、オンラインをどのように各企業で落とし込んでいくか、という議論を進めて頂ければ幸いです。