2020/7/31 医療分野における功利主義的思想 医の倫理#1
緊急避妊薬を薬局で買えるようにすべきだ、という議論が盛り上がりました。
というよりも、「緊急避妊薬を薬局で変えるようにする前に、性教育をきちんと行う体制を整えるべきではないか」という発言が大きく取り上げられ、それはもう気の毒になるくらい猛烈な批判を浴びていました。
「性教育を受けられなかったのはその人達の責任ではないのに、いたずらにアクセスを制限するべきではない」「薬局で買えるようになれば助かる人はたくさんいる」という論調が多かったように感じます。
たしかに今起こっている社会的な問題について、個人に責任を負わせている現状も如何なものかと思います。
こういう議論はもう手垢がつきすぎるくらいに議論されてきた問題だと思うのですが、つまるところ"トロッコ問題"なのでしょう。
すなわち、功利主義が正しいのか、義務論が正しいのか、そういう個々人の正義の議論に行き着くものだと思います。
1.薬局へのアクセスを解禁すれば多くの人が助かる
一方で、解禁しなければ被害を受けなくて済んだ人に被害が出る
2.薬局へのアクセスを制限し続ければ多くの人が助からないままである
一方で、解禁しなかったことによって新たに被害を受ける人は出ない
このどちらが正義と言えるのか、正義の問題です。
過去の医療でしたら間違いなく功利主義的な1.が選ばれていたでしょう。
多数の利益のためには少数の犠牲は必要であると考えられていた時代もありました。時代背景として仕方のない時代もあったと思います。
しかし、今や時代は「多数の利益が見込まれるのであれば少数の犠牲は許される」そういう時代ではありません。
医療に功利主義を持ち込んだ際にもたらされる害については歴史が証明しています。
このままで良いとは思いませんが、拙速であってはいけません。
議論が進んでいくことを祈ります。
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