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虚構日記「水曜日はサービスデー」
水曜日はサービスデー。
午前中に美容室に行ってわたしは可愛くなったんだもん。
このまま家になんて帰ってやるものか。
水曜日はサービスデーだから、映画館に出向いた。
ビルの4階にある小さな映画館でチケットを買う。
水曜日はサービスデーだから、1300円。
結構席が埋まっていた。
映画を観ながら考えた。
今日の映画はわたしにとってはハズレだったかもしれない。
なんだかちょっと、かなしくなる。
でも水曜日はサービスデーだから、別に良いの。
水曜日は週の中でいちばん素敵な曜日なの。
映画館を出て、喫茶店に向かう。
お目当てのお店の入口に「喫煙目的店」のシールが貼られていることに気がついた。
わたしは煙草を吸わないし煙も実は苦手なんだけど、雰囲気があまりに気になったものだから構わず入店した。
煙もくもくの店内を覚悟していたけど分煙されていた。
匂いはわずかにするけれどコーヒーを飲んでいない時にマスク(わたしは花粉症だからこの季節マスクは必須なのである)をつけていれば全く気にならない。
やっぱり水曜日はサービスデー。
わたしの鼻はよく利くの。最近は鼻水が垂れるけど。
美味しいコーヒーをすする。
アメリカ人作家の短編集を読み終える。
今日はまだまだ終わらせない。
だって水曜日はサービスデー。
もう一本、映画を観たい。レイトショーが始まる。
喫茶店から歩いて6分。
地下の小さな映画館でチケットを買う。
水曜日はサービスデーだから、1200円。
席はまばらに埋まっていた。
映画を観ながら考えた。
今日の映画はわたしにとって当たりだったかもしれない。
水曜日はサービスデーだから、一本目の映画までわたしにとっての当たりに変わった。
お昼に観た映画と夜に観た映画はどちらもちょっとだけテーマが似ていた。
だから、同じ日に観て正解だった。
水曜日に観て正解だった。
映画を観終えた。感想を誰かに伝えたくなった。
それに今日のわたしは可愛くなったんだから。
あの人に連絡をしてみようかな。
いや、でも。
水曜日のわたしは、わたしだけのものだ。
水曜日はサービスデーだから。
スマートフォンを機内モードにしてわたしはわたし以外を遮断した。
まだ今日を終わらせたくないの。
だって水曜日はサービスデーだから。