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【Sourire Tapas】Sourireのタパス店でレストランの本義に思いを馳せる

緩急のあるメニュー構成と意表を突く味に魅了されたレストランSourire。

素晴らしくおいしいのだけれど、それなりの値段もするし、量も多い。
そう頻繁には通えない。

タパスを出す気軽な店もあるようだ。
https://www.sourire-restaurant.com/sourire-tapas-francaises

というわけで、今宵はSourireのタパス店へ。
本店のレストランはやや不便な立地だが、こちらのタパス店はノートルダム寺院にほど近い繁華街にあり便利。

一皿の値段が1,000円前後とかなりリーズナブルで、賑わっている。

席につく。
まずはシャンパンを注文しようとするが、今日はないとのこと。
そんなわけなかろう。
ないのではなく、1人客のためにボトルを開けるのを嫌がったのだろう。
仕方ない。
代わりにスパークリングワインを飲みながらメニューを眺める。

前菜には魚のカルパッチョでも食べたいなと思ったけれど、メニューに書いてある帆立とタラが今日はありませんとのこと。
市場が休みの月曜日だからだろうか。
だとしても魚の前菜がまったくないのは寂しい。

シャンパンもない。
魚の前菜もない。
ないないづくしか。

他に冷菜はあるかと尋ねると、ブラータはいかがと言われる。
ブラータチーズ。
前菜にチーズは寂しいとは思ったけれど、まあ仕方ない。
とりあえずそれを前菜にして、もう一つは暖かい皿を注文する。
牛肉のなんとかって書いてあるけれど、よくわからない。
軽いメイン料理代わりにはなるだろう。

しばらくすると、2皿が同時に運ばれてくる。
この店では前菜もメインも特に区別がないようだ。
まあタパスだからそんなものか。

ブラータチーズにはマンダリンオレンジ、胡桃、日本の紫蘇が載っている。
紫蘇は紫蘇の香りがしなかった。
マンダリンはとても丁寧に皮が剝いてある。
胡桃は香ばしくていい感じ。
ぺろっと食べ切る。
まあ、想定内の味。

暖かい皿は牛肉のクリームスープ。

レベッカ・L・スパング『レストランの誕生』によれば、restaurantの語源はrestaurer(回復させる)。
もともとは疲れた胃袋を「修復」するためのブイヨンや肉汁、コンソメを意味した。
薬としてのrestaurantを提供する店のことをやがてrestaurantと呼ぶようになった。

そんな語源や由来も遠い過去になってしまったのだろうか。
現代のフランスのレストランでいわゆるスープというのはほとんど出てこない。

こういうシンプルで温かいスープというのは案外うれしい。
寒い冬には特にありがたい。
外食続きの疲れた胃袋を「修復」してくれる。
タパス店でレストランの本義を思い出すことになるとは思いもしなかった。
バターとクリームがこってり入っていて、いかにもフランス料理という味。

スープが2杯も来るのでこれだけすでにお腹は満たされているのだけれど、これで食事が終わるのもなんだか物足りない。

メインに鴨をとる。

甘いオレンジソースが鴨にたっぷりとかかる。
旨味。
Sourireのレストランもそうだけど、タパス店の方向性は旨味。
もちろん、これも良い皿だった。

3皿と3杯で6,000円と少し。
ディナーとしてはかなり安い会計となった。

じっくり食べるような店ではないが、さささっと食べたい夜にはよいかもしれない。

贅沢を言えば、カジュアルで、ややもすると店として雑然とした印象も残るタパス店と、フォーマルでしっかりどっしりこってりともてなしてくれる本店との、ちょうど中間のような店が欲しいと思った。



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