おいしさについて① パリのレストランの値段
日々、外食をしている。
お金のことを書くのは品がないように思われて、料理の値段をその都度ブログに書かないことのほうが多い。
しかし、価格というのは店選びや満足度の重要な判断材料に違いない。
まったく書かないのもそれはそれでリアリティがないのだろう。
超高級店は別として、多くの店は(安いという意味ではなく価格に見合うという意味で)よりリーズナブルに料理やサービスを提供すべく努力しているはずだから、そこも含めて評価するのがフェアというものだ。
お金のことについて少し書いておこう。
訪れているのはたいていミシュランガイドに掲載されている店だ。
星付きはほとんど行っていないけれど(行ったとしても1つ星まで)、一般的にはそれなりの高級店が多いだろうと思う。
飲み物はワインを2杯ほど飲む。
たまに3杯のときもある。
いや(・・・以下略)。
デザートは注文したりしなかったり。
コーヒーや紅茶は飲まない。
これで、1回の夕食で平均70ユーロくらい、日本円に換算して9,000円ほど。
税金とサービス料は込みだ。
アルコールや水を除けば5,000円から6,000円といったところだろうか。
これを高いと感じるか安いと感じるか。
ただし日本の金銭感覚で考えないほうがよいと思う。
日本という国は、そこそこのものがとても安い値段で手に入る珍しい国だ。
サイゼリアの「安さ」がしばしば話題になるけれども、あれはあれで、きわめて日本的な企業努力の結晶なのだと思う。
日本は消費者にとっては素晴らしい社会なのかもしれない。
産業として、働き手としてはどうなのだろうか。
ビッグマック指数というのがある。
どの都市であってもボリュームや質にそれほど大きな違いのないビッグマックの価格を比較することで、その国の物価をはかる指標だ。
アメリカで食べると1,000円だとすれば、日本は580円。EUは850円。
2012年まで日本はアメリカと同じ水準だったのが、ここ10年で大安売りに。
それだけ日本の経済が弱くなっていると言える。
EUと比べても7割くらいの値段。
同じような指標にトールラテ指数がある。
スターバックスのトールラテの値段を比較したものだ。
フランスはアメリカと同じ4.3ドルで世界17位。
日本は3.79ドルで36位。
フランスの88%。
まとめると、日本は飲食にかかる費用がフランスよりも安い。
ここ20年間、日本の経済は一貫して下降線をたどって来た。
もはや、日本人が欧米諸国を旅すれば、ほとんどの物は「高い」と感じてしまう。
1,000円払えばおいしい食事でお腹を満たすことができるという日本の「常識」を基準にパリのレストランを見てしまうと、どれも「法外の値段」に映るだろう。
別の観点にも触れておこう。
コロナ禍で露呈したことだと思うけれど、日本の飲食店は料理の価格を抑えてドリンクで稼ぐ構造になっている。
だからアルコールの提供が制限されると途端に店の経営が圧迫されてしまう。
料理には相当な手間暇がかかっている(と信じたい)。
もっと高価格に設定してもよいのではないだろうか。
価格も上げて質も上げる。
簡単ではないと思うけれど、働いても働いても利益が出ないよりは、そのほうがよいように思う。
素人考えなのかもしれないが。
プロが料理をつくるということを、客がどのように評価し、価値づけするのか。
これは食べる側の問題でもあるのだろう。