⑦落ちこぼれ同級生でバンドを組んだ話
女子アジカンみたいなバンドが始まった。
ギターロックにがなるボーカル、みたいな。
なんと形容していいかわからない。俺はなんとなくメンバーそれぞれの「自分かっこいいでしょ?」みたいな雰囲気が好きになれなかった。
そういや、ギタリストの吉沢とユウジはどんな関係なんだろう?と気になって周りを見てもユウジはいない。
ユウジは極端に自分の過去の話をしたがらなかった。俺とケンスケが中学の友達の話をしても、笑って聞いてるだけで、エピソードらしいエピソードは一つも聞いたことがない。
一度だけユウジが「小学校はほんとに友達もできなくて、学校にあまり行ってなかった。中学はまぁ、それなり」と俺に言っていた。
初めて泊まりに行った日、お母さんが歓迎してくれたのは、自分の息子に初めて友達ができたという嬉しさからだったとその時にわかった。
気づくと女子アジカンは「今日は来てくれてありがとうございました。ラスト!」と勝手にライブを閉めていた。いや、まだこの後出るから。
俺は苦笑いしながら眺めてたら、ドラムがカウントしてギターというところで、ギタリスト吉沢のストラップからギターが外れた。
吉沢は慌てている。そりゃそうだ、ギターとストラップが外れたらガムテープかなんかで貼り付けるしかないもんな。
しかし、何を思ったのか、かっこつけたかったのか吉沢は「これがロックだろ!?」と叫んだ。
間髪いれずに「いや、ちげーだろ!」と客席からヤジが飛んで、フロアがドッと湧いて爆笑をかっさらった。
多分その日一番の盛り上がりだ。
ステージを見ると慌てまくった吉沢がストラップを直してる。ガムテープ持ってこなきゃ直らないぞ。
結局、中腰みたいな感じでギターを弾いて最後の曲を終えた。
俺が楽屋に戻るとユウジが3バンド目の人達と楽しそうに話してた。
ユウジが「みんな俺らと同い年だって!」と楽しそうに俺に話しかける。
すると1人が「次やるNodaxです。CAWLING LARGEめっちゃいいすね!今ユウジ君と話してたんですけど、俺らも高校の同級生とかでやってるんすよ!」
俺はタメのバンドマンに褒められたのが嬉しくて
「あざっす!頑張ってください!」と声をかけてユウジとフロアに向かって歩いてると、ステージの片付けを終えた吉沢とすれ違ったから、お疲れ様です。とだけ声をかけたけど、聞こえるか聞こえないかぐらいの声で「あ、ども」と言われた。
Nodaxのライブが始まった。
SEはゼリ→。これまた渋い選曲だな。
偉そうに腕を組みながら見ていた。ライブが終わるころには、俺たちはこの同級生バンドのレベルにビビることになる。