⑥落ちこぼれ同級生でバンドを組んだ話
文化祭から数日後、タケ君からCDをもらって、俺たちはいつものカラオケ部屋で聴いた。
音は良いとは言えないけど、初めて録音した俺たちの曲に興奮した。
そして、俺は2人にジャケットは証明写真を使おうと提案した。
俺たちなりの文化祭に対する抵抗だった。
フォトショなんて当時も今も使えないから、ワードで「CAWLING LARGE」「バックドロップ」の文字を印刷してそれらを目を隠すように貼り付けて、ジャケットは完成。ピストルズの真似をしたジャケット。先輩達もよくやってた。
すげー、90sパンクみてーじゃん!とユウジが喜んだ。
するとケンスケがCDRを30枚ぐらい持ってきて、ユウジにPCでコピーしてくれと頼んだ。
あれ?CDRどうしたの?
ケンスケは「文化祭実行委員のパソコンの近くに落ちてた」と言ったけど、多分、これ持ってきちゃったんだなー。
ケンスケ、意外と文化祭実行委員にイラついてたんだなー。
全力で気づかないフリしてユウジにコピーを押しつけて、俺たちは初めてのデモCDを完成させた。
1stDEMO「バックドロップ」
home work
明日明後日
liberty
学園天国feat.take guitar(一発録りカバー)
俺たちはこのデモCDを持って、2回目のライブハウスへ行った。
10月上旬。トップバッターを任せられた(?)俺たちのリハーサルは一番最後だったため、必然的にライブハウス入りも最後となる。ちなみにこれは逆リハという一般的なライブの方法で出演の順番と逆の順番でリハーサルを行う。
ライブハウスに到着すると、前回よりも大分慣れた感じで「おはようございまーーす!」とスタジオの扉を開けた。
中では二番目に出るバンドがリハーサルをやっているところだった。
女の子がボーカルをやるバンドだった。アジカンみたいな雰囲気。明らかに緊張した雰囲気の彼女は最終的に「大丈夫だと思います」と絶対大丈夫じゃないだろうけど、笑顔でごまかしリハを終了した。
交代の時に軽く挨拶する。「CAWLING LARGEです、今日はよろしくお願いします。」俺たちがそういうと、ギターの男が「よろしくお願いしまーす!あれ?長崎?」とユウジに話しかけた。
「えーと、誰でしたっけ?」
俺はユウジの性格を知ってるから言うけど、ユウジは決して大物ぶりたくてこんな事を言うタイプじゃない。ユウジはリアルに忘れている。
「小学校一緒だった吉沢だよ」つづけて「え、バンドやってんの?」とその男は言った。髪の毛を短くかりあげて、バンドマンていうよりサッカー部みたいな印象だった。
その言い方には若干の侮蔑が含まれているような気がした。俺がゲージュツに進級が決まった時のクラスメートの目のような。「お前みたいなやつがバンドやってんの?」に聞こえた。
だから、ケンスケが満面の作り笑顔で「よろしくな!」と前に出たのも俺はわかる気がする。
向こうのギタリストは明らかに嫌な様子で「お、おう、よろしくな!」と言い返し、それと同時に裏に歩いていってしまった。
ユウジは「別人てぐらい変わってた」と言ったけど、ユウジの人間に興味無いところが原因だ。
リハーサルを終え、本番までに俺たちは持ってきたCDを並べる作業へ。またもケンスケが学校から”お借り”してきた木のボードに、「CAWLING LARGE!CD無料配布中!」と書いてCDを置いた。
オープンの時間になると、さすが高校生バンドだけの日。お客さんは俺たちと同世代ばかり。フロアには20人ぐらいのお客さんが来て、ライブは始まった。
俺たちはトッパー。SEはハイロウズ。
1 home work
2 遅くもないけど早くもない
3 明日明後日
4 liberty
5 song for art
6 short short
初めのライブよりも上手くできた気がした俺は、楽屋に楽器を戻し、フロアに行った。
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