⑧落ちこぼれ同級生でバンドを組んだ話
Nodaxはシンプルな4ピースパンクロック。SEにも使ってたゼリ→の影響を受けてるのか、コーラスでシンガロングできるスタイルだ。ボーカルはチバユウスケから影響を受けたであろう、髪型と声の出し方だった。それでも可愛らしい顔立ちのせいか、本人のオリジナルのように見える。
途中、ランシドの曲をワンフレーズだけぶっこんできた瞬間、その遊び心に俺とユウジは拳を突き上げていた。
ただ、これだけじゃない。
Nodaxはうまい。特にドラム。
見た目はギャル男か?と思ったけどな。
後から聞いたら「この肌はプールの監視員バイト焼けだよ」と怒っていた。
この後、Nodaxとは長い付き合いになっていく。
4バンド目はカカシというメロコアバンド。メンバーも気さくな人達で動員もかなりあった。
とにかく全員うまくて、俺は「え?ほんとに高校生?」と笑ってごまかすぐらい、その差に落ち込んだ。
ドラムだけ大学生のヘルプだったらしいけど、それにしてもうまい。
ライブが終わり、ライブハウスの閉店までの時間の間、簡単な打ち上げのようなことをした。誰が声をかけるでもなくNodaxとカカシと輪になって話をし始める。
「CLはこれからどんな感じでやってくの?」と聞かれたので「とにかくライブやりたいんだよね」と、ユウジとケンスケも隣で大きくうなずいていた。
俺はバンドマンの仲間入りができた気がして、ずっと話をしていたかった。ユウジやケンスケとも違う、同志のような感覚だ。
そんな楽しい時間をぶち壊すかのように吉沢がユウジに声をかけてきた
「長崎、結構かっこいいじゃん。お前ドラムやってたんだ?イメージなかったわ」
超上から目線。この時「あ、こいつ はユウジの事馬鹿にしてた方の人間だな」と思い、俺は少しイラっとして「おい!」と言いそうになったけど何も言えなかった。
けど、堪えられないのがケンスケだ。
「ギターぐらいちゃんとメンテナンスしとけよ」と笑いながら言った。
吉沢は一瞬戸惑ったあと「あ?なに??」と完全に攻撃態勢に。でも、明らかに目は怯えていた。
そんな時カカシのメンバーが「ハハハーッ!!ホントだよー」と爆笑した。みんなも釣られて、もしくは笑いに変えようとして、一緒に笑った。
ユウジは苦笑い。
ケンスケはもう笑ってなかった。
吉沢は何か言いたそうだったけど「いやぁ」とか言いながら、背中を丸くしてその場を離れていってしまった。
少しだけ吉沢がかわいそうに思えたけど、ユウジは最高だぜ?とその背中に向かって心で唱えた。
俺たちは連絡先を交換して、その日は解散した。
夜になっても眠れなかった。ライブの余韻がずっと取れない。
一回目のライブは緊張で全然楽しめなかった。いや正確には楽しかったのだが、余裕がなく、疲れの方が圧倒的に勝っていた。
今回は心地の良い疲れだった。
ライブハウスの店長からも「近いうちにまた呼ぶからな!同じ年代の奴らでおもしろいことやろうぜ!」と言ってもらえたしな。
演奏面はボロクソに言われたけど。
「バンドっていいよなー」と何回も口に出してた。
俺は久しぶりに興奮で寝れなかった。
ライブ後の初めての練習。俺は次のライブに向けてもうやりたいことはたくさんあった。
だけど、ユウジが「ドラムやめたい」と言い出したのだ。
つづく
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