特急ひだに乗って奥飛騨温泉郷『槍見館』に宿泊してきた
ローカル線で行く、一人旅好きの秋野あき子です。
2024/3/19〜3/20にかけて、富山駅から特急ひだに乗って、「日本秘湯を守る会」の会員宿『槍見館(やりみかん)』に宿泊してきました。
今回は、金沢-富山間をローカル線で、富山-高山間を特急で、そして高山駅から濃飛バスを利用して槍見館へと向かいました。
奥飛騨温泉郷は金沢から行くなら車で行った方が手っ取り早いのですが、せっかくなら特急ひだに乗って電車旅を楽しみたいと思います。
毎度、旅の友に本を一冊携えるのですが、今回は乗り継ぎが割とタイトで待ち時間があまりなさそうなので読書はまた次回にしたいと思います。読みたい本はたくさんあるんですけど。
さて、この槍見館ですが、北アルプスの『槍ヶ岳』を仰ぎ見つつ、すぐそばの清流も眺めながら温泉に浸かれるそうです。
凄すぎんか…これは憧れざるを得ませんね。
天気次第、というちょっとしたギャンブルでもあります。土砂降りであれば山のシャワーを全身に浴びながら温泉に入れるのでしょうか、それはそれで贅沢ですね。
ところで、「アルプス一万尺」の歌詞の中に「こやりのうえで」とありますが、この槍ヶ岳のことなんだそうですよ!今回調べてひとつ賢くなりました。アルペン踊りをさあ踊りましょ。
天気予報では晴れのち雪…果たしてどうなるのか。
金沢-富山間は、毎度旅の始まりのローカル線なので割愛させていただいて。
早速、富山駅構内で昼食です。
北陸といえば寿司ですね。普段から回転ずしには家族でよく行きますが、どこに行っても美味しいですよ。
富山はブリや白エビが有名ですね。サイズは小ぶりでしたが美味しく頂きました。
日の高ぇ時間から飲むレモンサワーはキマる。
お腹も満たされたところで、いよいよ特急ひだに乗る時間がやってきました。
しかしまぁ外国の方が多いこと!
平日だということもあるのでしょうが、乗客の7割以上が外国の方の印象です。エンジョイジャパン、ハバナイストリップ。
約1時間半、列車は渓谷を走ります。特急ひだは車輪の音がとても良いです。景色も美しく、最終駅の名古屋まで乗っていたいところですが。
お酒のパワーか、何度もトイレに行ったので「あのジャパニーズめっちゃトイレいくやん?」とか思われたならソーリー。
高山駅のホームから改札へ向かう間、スーツケースを転がす外国人の群れにポツンとひとり日本人主婦。ワシ外国来たんか?なぜか異国情緒を感じつつ、駅のすぐ隣にある濃飛バスセンターでバスを待ちます。
大型の観光バスですね。グリーンのラインが爽やか。
高山駅から槍見館の最寄りのバス停である中尾高原口まで、約1時間半。バス内にはトイレはありません、膀胱との熾烈な戦いが予想されます。酒を飲んだことを今更ながら後悔しだすわたくし。
しかし、バスに揺られるうちにいつの間にか眠ってたようで気がつけば辺りは白銀の世界でした。乗客は私ひとりとなり、毎度のことながらニッチな旅をしているんだと感じさせてくれます。
中尾高原口に到着し、あらかじめ頼んでおいた槍見館の送迎車に乗り込みます。程なくしてついに槍見館に到着しました。
北陸の民なので今更雪に喜ぶこともないと思っていましたが、やはりテンションは上がります。こう風情のある宿に、雪も風情のある振り方をしてくれて。横殴りの大雪だったらどうしようかと思いました。
アメージング…ロビーの椅子でゆず茶を頂きながら館内の説明を受け、お部屋を案内してもらいました。
まだまだ部屋内を楽しみたいところですが、そろそろ夕方。暗くなる前に温泉を楽しみます。
槍見館は露天風呂がなんと7カ所もあり、内2カ所は混浴。ホームページの画像は槍見の湯という混浴で、朝7時から9時までは女性専用となるそうです。ありがたいですね〜。
早速温泉へ向かいましょ。
ロビーにある長靴に履き替えて、館内を進みます。
道中は結構歩く上に館内の階段も多く、またごつごつした石の路地は足場が悪く滑りやすいので、注意が必要ですね。脇見ばかりしていると転倒しそうです。
まずは「岩見の湯」に入ります。
脱衣スペースにはカゴが4個ほど置いてあります。露天なのでとにかく寒い。さっさと裸になり湯に浸かると冷えた爪先がぴりぴり痺れました。岩見の湯は洞窟風呂っぽい感じです。6〜7人は入れそうなくらいのスペース。
眼前に雪景色が見えますが、川を見ようと思ったら立ち上がる必要があります。洞窟に吹き込む雪が湯に溶けていきます、風情です。
続いては、誰もいなさそうなので混浴「槍見の湯」に入ります。
見よ、この雪の世界を。
最高の雪見風呂です。顔や肩にはらはら雪が落ちてきて冷たいですが、湯元の方に行けば温度が熱いのでだんだんポカポカしてきます。
身体を深く沈ませれば、すぐ横を流れる川と繋がっているように思えて、不思議な感覚です。
鳥のさえずりさえない、水の流れる音だけが空気に溶けていく静かな空間。神聖さすら感じさせます。
オールシーズンで槍見の湯に入ってみたいですね〜新緑の季節、紅葉の季節、それぞれまた異なった景色を楽しめそうです。
身体もしっかりあったまったところでお次の温泉を目指します。もう下着をつけるのがめんどくさいので、裸の上に直接浴衣を羽織ります、ノーパンノーブラです。誰得なのか。
槍見の湯ほど開けてはいませんが、空を見上げながら入る温泉という感じです。まんてんと言うだけあって、晴天の夜なんかは星がきれいに見えるのでしょうね。
次からは貸切露天風呂コーナーです。
覗き込めば外からでも中の様子が見えてしまうのですが、大体「入浴中」か「只今空いています」の札が遠くから薄っすら見えるので、不用意に近づきすぎず人がいるかどうかわかります。不躾な輩がいたら覗き込んだりするのかもしれませんが、こんな美しく風情ある空間でそんな邪な振る舞いをする人間がいるとも思えませんね。堂々と浴衣を脱がせていただきます!シャッ!!
プライベート空間でもありながら、自然も堪能できて素晴らしい。湯壺の造形が凝っていて素敵でした。
ほたるの湯は川沿いではなく、宿の建物沿いにあるので景色を楽しむよりかは確実なプライベート空間で温泉を楽しむ感じですね。混浴や覗かれそうな露天風呂にちょっと抵抗がある方には、ここなら気兼ねなく堂々と浴衣も脱げるし、人目を気にすることなく温泉に浸かることができると思います。ひっそりと佇むところに蛍あり、そんなイメージでしょうかね。
貸し切り露天風呂の中ではこの播隆の湯の雰囲気が一番好きかも。小窓から川も見えるし、雪もちらちら吹き込んできます。
最後の貸し切り露天風呂「森の湯」はファミリーで利用している声が聞こえてきたので、翌朝入りました。中には木の滑り台やブランコがあり、小さなお子さんが喜ぶ楽しい作りとなっていました。ほたるの湯同様、建物側にあるので風景を楽しむよりプライベート空間で寛ぐタイプの貸し切り風呂ですね。
そして、足湯「なごみの湯」は冬季閉鎖となっておりロープが張られていました。
以上が露天風呂でした。どの湯も趣深く楽しく、何度でも巡りたい温泉です。ちなみに今回の宿泊で、到着早々、夕食後、寝起き、朝食後の4回に渡って湯めぐりしました。日が沈んでからの露天風呂は本当にムーディでした。暗い空からしんしん雪が降り注いで、照明がぼんやり灯って、肌がぬめり照らされ、なんとも扇情的…。一人旅であんまり寂しさを感じることはないのですが、このムーディな空間は少し人恋しくもなりますし、一人でこんな贅沢を!?というわずかな罪悪感にも見舞われます…しかしせっかくの旅!心ゆくまで楽しむことが旅人の極意ではないでしょうか。一人納得させるわたくし。主婦の一人旅も楽じゃあないのです…。
そして最後は、内湯に参りたいと思います。
大浴場ももはや露天風呂です。奥にあるガラス戸は開けることができるので、開けると外のひんやりとした空気や雪が吹き込んでくるし、眼下には川が流れていて壮大で圧巻の風景です。
槍見館の温泉の成分はこちら。
調べてみると、「単純温泉」とは「温泉に含まれている化学成分の量が少ない温泉のことで、効能に即効性はないが刺激の少ない温泉」とのこと。
そして「中性低張性高温泉」というのは「pH6〜7.5の中性で」「浸透圧が低く」「42℃以上の高温」であるという意味のようです。
平たく言って、刺激が少なく肌に優しいあったけぇ温泉ということなのですね〜温泉って本当奥深いですね。
身体はもうホッカホカです。良い感じにお腹も空いてきました。夕飯までまだもう少し時間があるので、館内を散策しつつ部屋に戻ります。
館内をウロチョロしながら奥飛騨の伝統を感じました。
そして一旦部屋に戻ります。
落ち着く空間なのに興奮もするし、情緒が乱れます。館内に散りばめられた粋な造りに胸がときめきっぱなしです。ヤダ思春期かしら…。
さて、そろそろ夕食の時間です。とても楽しみ。
夕食はロビーの奥に食事会場があり、ふすまや障子、ロールカーテンなどで各客ごとに簡単に仕切られています。もちろん、ある程度他のお客さんの顔は見えますが、それぞれ食事の時間がずれたりしていて一人でも気兼ねなく食事を楽しめる空間となっていました。
毎度のことながら、食事の写真が本当に下手すぎるッ。食べ出すと食べることに集中するので写真を撮らなくなるんですよね…。
どの料理も本当に美味しかった!特にお肉三種盛りと大根のホアグラはさみ揚げに感動…それなのに写真がない。他のお客さんも、給仕係のお嬢さんに「この食事が本当に楽しみで。本当に美味しいです」と伝えていたり、お隣からも「ほんとう美味しい。どれ食べても」と漏れ聞こえたり、みなさんお食事を楽しまれていました。
ビールを飲んだ後は、大好きなレモンサワーを頂き、奥飛騨の味覚を堪能。
食後はロビーで氷結レモンを購入し、部屋でのんびり飲みながらごろごろ。
この後、露天風呂巡りをしてもう一杯飲んで、気づいたら朝でした笑
朝風呂の後、舞い降りる雪をぼーっと眺めていました。時間がゆっくり流れているようです。
朝食は小鉢の量がちょうど良く、全てが優しい味付け。朴葉味噌も美味しかったです。
食後、「この後9時からロビーで餅つきを行いますのでよかったらご参加下さいね」と声をかけられました。何そのイベント、楽しそう!
ゆったりと時間が流れていき、もうそろそろチェックアウトの時間となります。毎度、現実に引き戻され旅の終わりを感じるこの時間がとても切ない。叶うことならずっと夢の中にいたいものです。
素敵なお宿でした。また必ず泊まりに来ます。
次は夏がいいかな、秋がいいかな、また冬がいいかな。どんな季節でもまた夢の中にいさせてくれるまさに秘湯の宿でした。
そして、中尾高原口まで送迎を頼みました。
高山駅行きへのバスを待っている時間、ちょうど陽がさして神がかった景色を拝むことができました。やっぱり青空が見えると心が晴れますね〜。
10分ほどバスを待つ間、ふと気づきました。
「トイレ済ませたっけ…」
昨日のバスでは疲れていて眠ったことで尿意は感じませんでしたが、今朝はどうでしょう。たっぷり寝てたっぷり温泉に浸かりたっぷり珈琲を飲みました。
このあと1時間半のドライブが控えています。果たして私の膀胱は終点まで耐えられるのだろうか。
結論。辛うじて終点の高山駅まで膀胱は耐えてくれました。到着時、誰よりも早く運賃を握りしめ誰よりも早く席を立ち誰よりも早くバスを降り、そして誰よりも早く駅のトイレに向かいました。
あんなに開放感のある排泄はない…!
バスの揺れで膀胱が刺激されていつ「アウトー」となってもおかしくなかった。
今回の旅の教訓は、トイレのないバスを利用した1時間以上の移動は年齢的にそろそろヤバい、です。
次回の旅に活かしたいと思います。
そして、旅の終わり。
今回の旅はここまで。
また次は、どんな旅に出てようかな。