激渋の湯めぐりツアー①♨️能登『龍王閣』〜氷見『神代温泉』〜庄川『湯谷温泉』
鄙びた温泉好きの秋野あき子です。
2023/11/11に、石川県から富山県をまたぐ日帰りの湯めぐりツアーを敢行しました。
今回は車旅。
石川県七尾市にある湯川温泉『龍王閣』から、富山湾沿いに車を走らせ県を超え、富山県氷見市の『神代(こうじろ)温泉』へ向い、氷見で海鮮丼を食べてから同県砺波市の庄川温泉『湯谷温泉旅館』を巡ります。
1日で三温泉巡るなんて欲張りさん…。
一温泉目 : 湯川温泉『龍王閣』
石川県七尾市、和倉温泉より車で15分ほど山村を走ると見えてきます。
かつて10数年前、彼氏(現夫)と宿泊したことがあります。あまりの渋さに当時の夫は若干引いていたので、ものの価値のわからん奴めと思ったものです。それ以来、こういう激渋の温泉は一人で行くことに決めたのです。
和倉温泉は温泉街なのでそれなりに栄えていますが、少し道を外れるだけでもう長閑な農村山村が広がります。
ありがたいことに、宿に近づくにつれてこの看板が至る所で存在を主張してくれるので迷うことはありませんでした。
この「龍王閣」は石川県の温泉で唯一、ラドンを含有している温泉だとかで、全国から温泉マニアが訪れるそうです。いろんな芸能人の色紙や、NHKの記事、テレビ番組の記事、新聞記事など様々なメディアから取り上げられたとおぼしき掲示物がたくさんありました。
ラドンといえば「水兵リーベ、ボクの船」でしか聞いたことのない元素記号です。「HでリッチなK子さん、ルビーせしめてフランスへ」「変なねーちゃん歩いてくるよ、キセルでラード食っていた」でお馴染みのラドンさんじゃありませんか!(この覚え方、地方で差がありそうですね、じゃんけんみたいに)。
では、ラドンが含有されていることで、身体にとって何が良いのかというと、そこんとこは正直わかりません。ラドン温泉は免疫力を高めるとかで、そのエビデンスは??と聞きたくなりますが、私は温泉ソムリエでもなんでもない、ただの鄙びた温泉好きの、しがない主婦です。化学も苦手だったし。身体にいいんだなぁというざっくりとした情報ですみません…気になる方は調べると面白いかもしれませんね。
さて、早速温泉へ参ります。
脱衣所だけでワクワクします。広さは体感8〜10畳くらいでしょうか、狭くも広くもないです。脱衣カゴも10個くらいありますが、10人もいたら流石にギッチギチです。風呂場も3〜4人ほどしか入れない広さだし、洗い場も3つのみです。こじんまりと侘しく鄙びていて、それが良いのです。
長湯できるくらいの温度なので、誰かと来れば長話もできますね。ただ、浴室の天井は男女繋がっているので、シャワーの音やお風呂に浸かる音など向こうに筒抜けです。静かな宿なので、おしゃべりなどその辺は配慮が必要ですね。
過去に宿泊した時の思い出が微かに蘇ります。そう言えばこんな風呂場だったなぁとか、ライオンに対しても「以前お会いしましたよね?」って感じです。
当時の夫も、宿の雰囲気に多少たじろいだものの「温泉がすごく良いな」と言っていたのを思い出しました。
土曜の10時頃に行きましたが、先客で一組ご夫婦がいました。平日の昼間ならきっと貸切状態かもしれません。
全体的に、宿の内装、つくり全てが実家感に溢れています。とくに昭和生まれの私にとっては、懐かしさで狂い悶えそうになるエモさです。
懐かしさでいっぱいな空間に、至る所に鍾乳石があって、あぁ昔、友達のお父さんが変なコレクション(失礼)家中に飾ってたなぁ…とか思い出しました。
入湯料は大人600円です。少し歩いた所にバス停がありますが、おそらく1日数本の便ではないでしょうか。基本的に車で来ないと不便かもしれません。駐車場は広く、宿のすぐ近くにあります。周辺には山村が広がるだけですが、長閑な山村の景色はモネの絵画のようで、心惹きつけられます。(絵画の下りはゴッホでもルノワールでも可。お好きな画家を当ててください)
二温泉目 : 氷見『神代温泉』
続いて、富山県氷見市にある「神代温泉」へと向かいます。
「龍王閣」を出発し、氷見方面へ向かうとすぐ海が現れます。
この日はあいにくの曇天でしたが、雲間から光が差して、なかなか幻想的な海を拝むことができました。真夏の晴天にこの道をドライブするのも楽しそうです。
ひたすら海を眺めながら車を走らせること約30分。海からほんの少し内陸に進むこと15分くらいで「神代温泉」に辿り着きます。
雰囲気最高ですね。
受付の奥におかみさんが見えたので声をかけてお金を払います。初めて来たことを伝えると、おかみさんのアツいマシンガン温泉ガイドトークを聞くことができます。
「温泉はここからすぐ近くにある源泉から引き、一切空気に触れないまま適温に覚ましてあります。すぐに鉄分が酸化するのですごく濁ってますけど、手で掬って見てくださいね、透明だから。湯船は本当に濁ってるんで、入る時の段差に気をつけて下さいね。源泉掛け流しの湯ですよ、ごゆっくりどうぞ」
なんか凄そう…ゴクリ
脱衣所で先客の女性に「そこのトイレ、怖いですよ」と教えて頂き恐る恐る用を足しに行きます。
このトイレ、なんと懐かしのボットン便所です!ボットンに小水をボットンしたのなんて20数年振り、下手したら30年振りくらいかも!!謎の興奮を覚えました。
そして確かに怖い。女性はかつてお子さんと一緒にこの温泉に来たそうですが「二度と一緒に行かない」と言われて今回は旦那さんと二人で来たそうです笑
ボットン便所で用を足させてあげたい、社会勉強させてあげたいお父さんお母さんは、ぜひお子さんと一緒に神代温泉に来てみてはいかがでしょうか。
土曜日の昼だったので、先客のご夫婦と、また別の女性客が後から入って来ました。やはり有名な温泉ですから、人は絶えませんね。撮影は諦めて入浴を楽しむことにします。
女湯の浴槽はこの画像よりもっと狭く、また薄暗いです。画像の通りお湯の濁りが半端なく、足先を入れるとまったく見えないので足裏の感覚で段差を感じとります。臭いは完全に鉄の臭い、味は海水のようにしょっぱいですがエグみはありませんでした。
洗い場は3つほどありますが、ちゃんと子供用の椅子や桶もあります。スペースは広いのでのびのび身体を洗えます。
龍王閣の温泉と同じく、熱すぎずぬるすぎず適温でした。こちらも天井が男湯と繋がっています。
脱衣所には洗面台はなく、受付の達磨のすぐ隣にあるマッサージチェアがドライヤーゾーンだとか。受付通る時には気づきませんでしたが、ここで先客の奥さんが髪を乾かしていました。何気なく世間話をして、この後庄川の「湯谷温泉」へ行くつもりだと伝えると「あそこ良いですよ〜ラピュタみたいで」と教えてくれました。ちなみにそのラピュタにもかつてお子さんを連れて行ったそうですが「二度と行かない」と言っているそうです笑
「廃墟みたいな所ですよね?かなり怖いですか?女性一人でも大丈夫そうですか?」と聞くと「全然大丈夫ですよ、こっち(トイレの方を指差す)の方がよっぽど(ヒソヒソ)」とのことで、次へ向かう湯谷温泉への期待度が一気に高まりました。
入湯料は大人700円でした。お湯の濁りに反してサラッとしていて、全身がポカポカになります。
おかみさん「今日は神奈川や東京や、太平洋側から来るお客さんが多いです」「いつまでたっても成長のない、こんな温泉ですがなんとか続けています」
いやいや、こういう温泉だからこそ全国からマニア達が足繁く通うんじゃあないですか。いつまでも「らしく」居続けて欲しいと思いました。
交通は車一択です。近くにバス停はなく、レンタカーを借りたりタクシーを利用したりして来るお客さんも多いそうです。
氷見の漁港からもそう遠くないので、氷見に遊びに来た際はこの神代温泉に立ち寄ることをおすすめします。
昼食は氷見の「魚市場食堂」で
神代温泉から再び海岸を目指し、氷見の漁港へ向かいます。氷見は「雨晴海岸」や「氷見線」で全国的にも有名ですね。私も、1年に1〜2度ほど訪れるくらいに氷見が好きです。
過去、何度か氷見線に乗ったことがあるので、ちょっとだけ写真を載せます。
美しいですよね!真夏は青と赤のコントラストが際立って本当に美しいです。今回は秋の曇天で、いかにも北陸らしい淋しげでちょっと陰鬱な日本海を眺めることができました。真冬の日本海はそりゃあもう、松本清張の世界ですよ。
さて「魚市場食堂」へと向かいます。
魚市場の2階に食堂はあります。土曜の昼はものすごい行列が並んでいました。とくに中国人、韓国人観光客の団体さんが多いようです。
整理券を取って、店の前のベンチに座り順番を待ちますがとにかく海から吹く風が冷たい!
20分くらい待つと席を案内されました。
海鮮丼と汁物がついて1580円。少し割高ですが、観光地はこれくらいしますね〜、少し離れたところにも美味しい海鮮丼のお店はたくさんありますが、一度この魚市場食堂で食べてみたくて。できれば酢飯がよかったなぁと少し残念でしたが、刺身はどれも分厚くて食べ応えバッチリです。アラ汁も冷えた身体に沁みます。
北陸は回転寿司でもクオリティが高いと言われます。特に富山県は美味しいお寿司屋さんがたくさんありますね。氷見は寒ブリが美味しいです。
お腹も満たされたところで、最終地点『湯谷温泉』へと向かいます。
三温泉目 : 庄川温泉『湯谷温泉旅館』
最後に向かうのは富山県砺波市庄川にある『湯谷温泉旅館』です。
この湯谷温泉旅館は秘湯マニア大絶賛の湯ということで一部ファンの間では有名です。なんといっても見た目のインパクトがすごいとのことで、事前の情報収集では「廃墟の底に沈む温泉」「バズーカ砲」「衝撃風呂」「いろんな意味で怖い」など気になるワード乱立でした。そして、神代温泉で出会った女性に「ラピュタみたい」と言わしめた温泉…。これは行くしかあるまい。
氷見市から砺波市までは能越道という国道を使います。
庄川といえば、庄川峡の庄川下りが有名ですね。
紅葉が見頃の11月はベストシーズンですが、この日はあいにくの曇天〜小雨。それでも、ドライブ中に美しい庄川を見ることができました。近日中、天気が良い日にもう一度来たいと思えるほど雄大です。
さて、そうして庄川の景色を横目に車を走らせていると、やがて到着しました。
駐車場はこのバス停のすぐ近くにあります。舗装はされておらず、雨が降ったら地面に水溜りができるので綺麗な靴は避けた方が良さそうです。
湯谷温泉旅館へと続く小道は、この郵便ポストの奥にあります。
全国的に熊が荒ぶっているので、熊の襲来に怯えつつ足早に坂道を降ります。ただし、傾斜がなかなかえげつないので、足を捻って転倒でもしたら、下までゴロゴロ転がり落ちること必至なので細心の注意を払いたいところ。
おかみさんにお金を払い、案内を受けます。この日は男性客が何人かいて、女性客は一人だけとのことでした。案内を受け先にトイレを済ませます。トイレはなんと!センサーで電灯がともり、洋式もあり、かつセンサーで便座がひとりでに開きますw先に神代温泉でボットン便所に入っただけに、ものすごくハイテクに見えてしまいました。
今のところ、ラピュタ感はゼロですね。雰囲気のある鄙びた日本の宿という感じから、どうラピュタになっていくのか楽しみです。
スリッパでこの階段を降りていく不思議な感覚。コンクリートの無機質な感触がスリッパを通して足裏に伝わります。
ブルーシートに囲まれた階段を進むと、うすら怖いカビ色の壁が見えてきます。そしてパーテーションに隔たれただけの脱衣所へと着きます。この辺から急にラピュタが現れましたね。
当然鍵はなく、このパーテーションをシャッと開ければ男も女も丸見えになってしまうので、先客がいたら開ける時には配慮が必要ですね。
この日も残念ながら、先客がいたので撮影は諦めてお湯を楽しみます。
すっごいラピュタ!!
コンクリートの洞窟に囲まれた空間に階段が続くのですが、もう階段の下の方にお湯が迫っています。
この湯谷温泉は、明治24年に開湯されたそうです。この近くにある大牧ダムが建設された1930年以降は、この地区の他の温泉がダムの下になってしまい、今では湯谷温泉の源泉だけが残り今に至るのだそう(庄川温泉郷商店ホームページより引用)なので、大雨の後など、川の増水に伴って湯量が増えるそうで、日によっては階段をもう少し水没させるのだとか。いや、すごい個性的すぎ。
温泉はほんのり卵の腐敗臭、静かに湯に浸ると気泡が身体にまとわりつきます。天然の炭酸なのかな。まったりと滑らかで、いつまでも入っていられる温度。そしてこの洞窟の空間。段差は身体を寝かして入れるくらいのスペースと、バズーカの方へ進めばほとんど立って入るくらいの水深になります。ちなみにこのバズーカは、シーソー式なので男湯に発射されている時は、女湯には発射されません。実に面白い作りです。
先客の女性は、大の温泉好きなのが、一切みじろぎせずひたすら黙ってお湯に浸かっていらっしゃいました。テコでも動かない気迫を感じ、その強い意志に勝てず私は15分足らずで上がることにしました。
あまりにも面白くて、そして素晴らしい温泉だったので、また必ず訪れて次は写真を撮りまくり記事に載せると心に決めました。ついでに庄川遊覧船にも乗っちゃおうかな(ワクワク)楽しみがまたできました。
入湯料は500円です。
事前の下調べでは無人とありましたが、今回は土曜日に訪れたからかおかみさんがいらっしゃいました。平日にくればもしかしたら無人の受付かもしれません。
交通の便は悪くなさそうです。すぐ近くにバス停もありますし、庄川遊覧船乗り場からもバスが出ていそうですね。庄川に観光の際は、ぜひとも立ち寄りたい素晴らしすぎる温泉でした。
秘湯感満載の三温泉
①石川県七尾市 湯川温泉『龍王閣』
②富山県氷見市 『神代温泉』
③富山県砺波市 庄川温泉『湯谷温泉旅館』
でした。どの温泉もそれぞれ個性が際立っていて魅力的でした。次はどんな秘湯へ行こうかな。