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俳句、自選自解003(黒葡萄)
黒葡萄皿と一点のみ接す
つねたまじめ
正岡子規が、そして高浜虚子が重要視した客観写生を、中学生の私は「見たままを言葉にするって、当たり前やん」と思っていた。
見たままを言葉に。
部活から帰ると、うちには似つかわしくもない巨峰が、白い大皿に無造作に載っている。人からもらったのだな。一粒一粒が濃い紫で、果粉が洗ったあとの水滴を弾いている。重量感がある。みずみずしくておいしそうだ。香りはしない。口に入れると、皮がぷつっと前歯で弾ける。
いや、これ、17文字になるん?ってか、気取った文章、ダサすぎっ!
黒と白、
球体と平面、
自然と人工。
そこだけ切り取って、ようやく俳句の体になった。