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俳句、自選自解001(水無滝)
虹かめ花さるさんとコメントをやりとりしていて、俳句をいくつか自選自解しようと思い切りました。とりあえず、一つやってみます。
水無しの滝や八方槍氷柱
(みずなしのたきや はっぽうやりつらら)
冬のある日、最も古い付き合いの賢者と六甲の地図を開き、どのルートで山頂を目指すかとぐだぐだ話しておりました。すると、
「水無滝」
水がないのに滝とは、これいかに。
いぬというのに、ここにいるが如し。
しょうもな!と言いながら、酒を飲みます。
次の日、早朝から登ったのです。途中、水量は少ないものの冷たい川の流れを歩かねばならず、後悔をし始めていました。細い川の両側が崖になっていて、足場に岩が多くなっていき、二人が無言で登ったその先で、ぱっと視界が開けました。
円く、滝壺が広がったような空間で、15メートルほどの高さから、ちょろり、ちょろりと水が流れます。いえ、流れてはいないのです。水量が多くないために、冬の寒さで滝が凍っています。細い氷柱が崖を覆っており、その先から細く水が垂れてくるのです。川水が一箇所からではないせいか、この円い空間を取り囲むように氷柱が輝きます。
空間上部はぽっかりと穴が空いたようになっていて、木々が葉を落としているために、陽光が弱く差し、氷柱で光が乱反射します。
水無滝は、真冬に凍てついた滝壺のことだったのです。
滝は、夏の季語です。
氷柱は、冬の季語です。
季重ねはご法度ですが、この句のように明らかに強い季語がわかるならば許容されます。
中七の「や」で、俳句を切っています。
前半の「水無しの滝」は、地図を見て目指した、観念としてのもの。
そして「八方槍氷柱」が、目の当たりにした真の滝の姿です。
「水無しの滝'は'八方槍氷柱」
とすると、その感動が薄れます。たった一文字ですが、ここは変えられない一字です。
なお、「槍氷柱」という言葉はありません。