物欲しさうな口 一句鑑賞004 野住朋可
一句鑑賞第5回となる今回は、俳人・野住朋可の一句を鑑賞します。
作者の野住朋可さんとは、これまで度々句座を共にさせていただいた。絶妙な季語だなと思って選に戴くと、果たして作者の句であったということが少なくない。その作句感性や鑑賞眼は素晴らしく、勉強させられること屢々である。
掲句にも、そのセンスの片鱗が覗く。とりわけ「日盛り」と破調とのアンニュイな配合など、女性ならではの視線に貫かれていて、私などが逆立ちしてみても、到底詠むこと叶わない。
花瓶ではなく「花器」とするセンス。一言一句忽せにしない言葉の選択は、見事というほかない。「さうな」の歴史的仮名遣いに、慥かに開いた花器の口許が見えるではないか。(了)