見出し画像

白鳥の太き首 銀化の俳人001 角葉づき

 銀化の会(主宰 中原道夫)に集う個性ある優れた俳人たちの秀句を鑑賞していきます。第1回は、角葉づきの一句を鑑賞します。

白鳥の太き首ふとしなひをり
              角 葉づき

『銀化』2020年1月号初出

 銀化へ入会する前に、見本誌として送っていただいた2020年1月号に載っていた句。一読して「あっ」と心の中で声をあげた。

 私たちが白鳥を思い描くとき、しなやかに撓むその首を「太い」とは思うまい。しかし、実際に白鳥をよく観察してみると、胴体に近い付け根の部分では、その首は慥かに太い。
 白鳥が、あの長い首とその先にある錘のような頭部を支えながら、優雅に嫋やかに振舞うためには、首まわりの筋肉が相当に強靱でなければならない。白鳥の首は、生理的・力学的に言って、太くなければならないのである。

 私たちは、その長さからくる相対的印象と固定観念とにより、白鳥の首は細いものだと思い込んでしまっている。しかし作者は、本物の白鳥を見て、見て、見抜いた末に、その真の姿の一端を私たちに描いてみせた。(了)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?