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妄想の世界

今朝、モノレールに揺られながら職場に向かっていた。

朝の通勤電車では何も音の流れていないイヤホンを装着し、本を読むのが毎朝の日課だ。

僕が今読んでいる本は「旅をする木」という、アメリカのアラスカに魅了された日本人カメラマンの星野道夫さんがアラスカで過ごした日々について書かれた本なのだが、やはりアラスカというだけあって、大自然や動物についての描写が度々登場するのだ。

僕は本を読んでいると、頭の中でどんどん妄想が膨らんでいき、気がつけば本は目で読み流し、妄想ばかりしていることがよくある。今日はもちろんアラスカの大自然の妄想がとまらなかった。

そんな妄想をしながらふと感動したことあった。

僕の頭の中ではライオンがシマウマを捕食しているシーンが広がっていた。別のシーンでは海に浮かぶ氷河が崩れ落ちていた。鯨の家族が海を悠々と散歩していた。

これは今、実際にアラスカのどこかで起こっている出来事かもしれない。

一方で、僕はモノレールに乗って妄想をしながら読書をしている。これもまた同じ世界で同じ瞬間に起こっている出来事なのだ。

全く同じ時刻に、同じ地球の少しはなれた場所で全く別のことが起こっている。想像をすることでしか体験できない出来事が。

今更何言ってんの?当たり前やん。なんて言われそうだが、今朝きちんと理解した僕は感動した。

泣いてはいけないと窓から空を見上げた。呑気に浮かぶ雲の下を鳥たちが飛んでいた。

あの鳥たちは兄弟なのだろうか?

妄想がまた膨らんだ。







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