何故か外国人とは思ってもらえない。
昨日、ある大学病院での出来事だが、看護師から突然、中国語で「你叫什麼名字?(名前は何といいますか?)」と聞かれ、ええ?急に何で聞くの?と思い、直ぐに反応出来ず、一瞬戸惑ってしまっていたら、つかさず台湾語で「Lí kiò sánn-mih miâ?(名前は何といいますか?)」と聞いてきた。台北では相手に中国で尋ねて、反応が悪かったり、うろたえていたら、外国人だろうと思い、英語で話しはじめる人が多い。また、日本語が話せる人が多いので、日本人だろうと思ったら日本語で話してくる。でも僕の場合はいつも台湾語で聞き直され、外国人だとは思ってもらえないことが多い。
中国語で話したら、うまく通じなくて、台湾語に切り替えられるというのは、中国語が苦手な台湾人の老人だと思われている証拠だ。実は最初から台湾語で話かけられることはもっと多い。僕が中国語で話しているのに、台湾語でしか話さない人たちもいる。
僕の中国語にしろ、台湾語にしろ、どちらも中途半端で幼稚なレベルなので、相手の言っていることがよくわからないことも多い。でも、こういう場合でも外国人だから話が通じないとは思われず、耳が遠いから何回も聞き返すのかもしれないと思われ、台湾語でずっと話し続けられる。台湾人は話している相手が外国人で中国語にハンディがあるとわかれば、英語を交えて、ゆっくりと簡単な中国語で話してくるのが通常だ。でも僕の場合は中国語が通じにくいと思われたら、すぐ台湾語に変えられる。
この理由はよくわからない。年寄りに見えるとか、態度や雰囲気から外国人には見えないとかだけの理由ではないと思う。同じように台北に長く住む僕とあまり歳の変わらない日本人に聞くと、自分から何も話さなくても、すぐに日本人だと気がつかれることが多いし、台湾語で話しかけらることはまずないと言っていた。
ちなみに僕の風貌は全く台湾人らしくない。普段着ている服装も全く台湾人らしくない。ひょっとしたら、自分の意識が関係しているのかもしれない。普段、一人で行動している時、自分は日本人や外国人だということは全く意識していない。自分もすでに台湾人になったとかも全く意識していないけれど、同じ土地に暮らす住民同士だという意識はたぶん強くある。こういう意識を持つことで、僕に接してくる台湾人には僕が日本人だと気がつかれないのかもしれない。
台湾人である妻と一緒に行動していると、二人の顔つきに差(妻は肌が浅黒く、顔つきも台湾人顏だ)があるからなのか、妻が常に僕を日本人だという意識を持って、僕に接しているからなのか、また、僕は妻と一緒の時は交渉ごとや料理の注文などは全て彼女任せにしていることが多いからなのか、自分自身も自分は日本人なんだと強く意識してしまっているのかもしれない。だからか、相手に彼女の夫は台湾人ではないようだとすぐに気づかれる。僕に「中国語わかる?」と聞いてくる人も多い。その度に妻は相手に「彼は台湾語もわかるよ!」と言って、相手を驚かせている。
思わず、笑ってしまったのは、この間、教会の礼拝でよく顔を合わせる台湾人が「まだ、日本語は話せるの?もう忘れちゃっているでしょ!」と聞いてきた。何で僕のことをそういう風に思っているのかわからない。はっきり言って、僕がまともに使いこなせるのは日本語しかないのに。
台湾生活は来年で28年目を迎えるが、台湾語を学んでいてよかったと思うことは、他人から台湾語で何か話しかけられても、完璧ではないが、とりあえず台湾語で答えることができることだ。台湾語はけっして少数者が使う少数言語なんかではない。僕の印象だと台北市内でも中国語と同じ程度に使われている。30年近く台湾で生活しているのに、「すみません、日本人なので台湾語はわかりません!」と言うのはさすがに恥ずかしいと思う。