母語・台湾語・客家語
以前付き合っていた潮州系インドネシア華人にペナン島出身の潮州系マレーシア華人の友人を紹介した時、お互いにマレー語とインドネシア語で話せば通じるはずなのに、2人とも使わず、また母語である潮州語も使わず、お互いに一番後に身につけて、一番苦手な共通中国語を使って話していた。なんで、マレー語やインドネシア語、潮州語で話さないの?と2人に聞いたが、2人とも、「いや、お互い違う言葉だからね…」と言っていた。第三者にとっては同じ系統の言語に思えても、当人達はお互いに違うと思っていたり、違うことに拘るのは当人達の自由なんだなと思い知らされた。
そう言えば僕の上司の一人はマレーシア華人で広東語と客家語が母語だと言うので、客家系台湾人と客家語で話すことはあるのか?と聞いたら、「台湾の客家語とは違うから台湾では使ったことがないね」と言っていたことを思い出した。また、友人の一人はお母さんが台湾の客家人でお父さんが中国の客家人なのだが、両親はお互いに中国語で話していたそうだ。理由はお互いに言葉が違うと意識していたかららしい。そのお陰で友人は台湾の客家語も中国の客家語も話せない。
中国の福建省南部に以前出張でよく行っていて、現地人の仕事上のパートナーもいたという台湾人の知人に向こうへ行ったら台湾語(台湾ホーロー語・台湾閩南語)で話すのか?と聞いたら、中国語しか使わないと言っていた。パートナーの実家にも行ったことがあり、彼が両親と話す中国閩南語は聞き取れたけど使う気にはなれないね!と言っていた。そのパートナーも台湾人に自分の母語(中国閩南語)が通じることはわかっているけど、台湾人には中国語しか使わないそうだ。その理由を台湾知人に聞くと、「聞いてわかるけど、やはりお互いに母語は違う言語だと感じているからじゃないか?」と言っていた。
また僕の客家系台湾人の友人や知人達は普段台湾語をよく使う。両親とも客家人だけど、家庭内では両親も兄弟もお互いに客家語や中国語は使わず、ほぼ台湾語だけを使っていた家庭で育った友人もいる。僕はこの友人の家族はもちろん、親戚達にもあったことがあるが、親戚同士でも台湾語しか使っていなかった。
彼らは皆んな客家人意識は非常に強いが、台湾語(台湾ホーロー語・台湾閩南語)だけを台語とか台湾語と呼ぶことはおかしいとは言わない。彼らも台湾語(台湾ホーロー語・台湾閩南語)のことは台語と呼んでいる。友人の両親にどういう時に客家語を使うのか?と聞くと、桃園の客家人が多い地域に住んでいる親戚に電話する時ぐらいだね。と言っていた。実は台湾の客家人の中には台湾閩南語を指して台語や台湾語と称することに反感を抱いている人が多いらしい。彼らにとっては台湾客家語も台湾語であるからだ。
知り合って30年以上になり、ずっとお世話になっている人も客家人だが、この人は元々台湾語は全く話せなかった。でも社会に出てから身につけ、今では台湾語で仕事をしている。話す相手が台湾語話者とわかると台湾語、客家語話者とわかれば客家語、中国語しかできない相手には中国語で、と使い分けている。
この人も台湾語(台湾ホーロー語・台湾閩南語)を台語や台湾語と呼ぶのはおかしいとは言わない。そして、僕の方から片言の客家語で話しかけると、喜んで客家語で応じてくれるし、客家語をいろいろ教えてくれる。僕があまりにも客家語の話題を出すものだから、僕が客家人と結婚しているに違いないと、ずっと勘違いしていたようだ。だから、この人に初めて妻を紹介した時、妻に客家語で話し始めてしまった。
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