台湾語?台語?閩南語?ホーロー語?

  台湾の閩南語を台語や台湾語と呼んでいいのか、或いは閩南語と呼ぶべきなのか?という話題がFACEBOOK上で度々盛り上がるようだが、僕は自分が書く日本語文の中では台湾語という言い方を書くことが多い。客家人や原住民の知人も読むはずだと意識した時には「台湾ホーロー語」にしている。ホーローも漢字表記にせず、仮名表記を使う。

 ホーロー(語源や漢字表記に関して、学者の間でも意見が分かれる)の漢字表記を河洛とか福佬といった当て字にする人も多いが、僕は使いたくない。河洛を使うと、正統な中華文化を受け継いでいる漢民族という意味になるし、福佬は福建人を侮辱する表現になるからだ。閩南という名称も本来は文明人ではない種族が住む辺境の地という意味がある。

 ホーローという発音自体も本当にふさわしい名称なのか疑問が残る。ホーローは元々中国で生まれた呼称だし、台湾や台湾語だけを表す名称ではない。中国福建省南部の言語や広東省東部の言語、また、これらの言語を話す種族を表す名称だ。

 また、客家語に関してはなるべく「台湾客家語」と書くようにしている。最近では客家人や原住民に気をつかっているのか、苦肉の策なのか、台湾語(台湾の閩南語)を「台湾台語」と呼ぶこともあるようだ。「台湾台語」なんていう表現が生まれるほど、台湾社会では台湾語のことを台語と言ったり書いたりする習慣が定着してしまっている。

 僕が台湾に初上陸したのは30年以上前だが、その時に会った親戚のおじさんから「君はアモイ(廈門)語がわかるか?」と日本語で聞かれた。その時はへえ、台湾語のことをアモイ語と表現する人もいるんだ!と驚いたが、でもこの30年間で、この言い方を聞いたのはこの時だけだった。後で知ったことだが、おじさんの娘(僕の前妻の従姉妹)は中国福建省アモイ(廈門)出身の中国移民家庭の子息と結婚をしていた。だから娘の配偶者一族に気をつかっていたのか、同族だという意識を持ちたかったのかもしれない。アモイ語と台湾語は両方とも閩南語系言語なので、ある程度方言の差はあるが、お互いに言葉がかなり通じ合う。

 自分自身、或いは自分の配偶者が中国の福建省南部から戦後に台湾へ移民してきた人、或いはそういう人の子孫だったりすると、自分や配偶者がどの種族に属するのかを説明したがらない人も多く見てきた。言葉が通じ合うから中国人という枠に入れたくない、でも先祖代々台湾人だったわけではない、という微妙な位置に留めておくしかないといった感じを受ける。

 うちの妻の父親は福建省東部の福州出身だが、あれだけ言葉や文化が違うと、さすがに台湾人とは明確に区別していて、妻は自分のことを中国人と台湾人のハーフだと自称している。妻にとっては父親は福建人で中国人である。ちなみに台湾人が福建語とか福建人と言う場合は一般的に東南アジア(東南アジアで福建語と呼ばれるものは一般的に閩南語のこと)と違って、台湾語と全く違う系統の福建系言語やその言語圏出身者を指している。福州語は閩東語とも呼ばれ、閩南語系統の台湾語とは言葉が全く通じあわない。

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