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福州傻瓜乾麵
台湾で福州乾麵、あるいは福州傻瓜乾麵(福州馬鹿汁無し和え麵)と呼ばれる、中国福建省福州にルーツのある福州系の住民が台湾で考案したと言われている乾麵(汁無し和え麺)。注文したら、ラードと白蔭油(薄い色の醤油)を混ぜたタレがちょっと入っただけのお椀に、白麵と呼ばれる ”かんすい(アルカリ塩水溶液)” の使われていない中国系の白い丸麵の細いタイプを茹でたものが入れられ、上に薬味の刻みネギが振りかけられただけのものが出される。その後にお客さんが自分の好みに合わせて、自由にテーブル上の各種調味料を加えて、掻き混ぜて食べるもの。つまり最終的な味は自分で決めて、自分で作る。専門店もあるし、色々な麵料理を販売する一般麵食堂のメニューの中にもある。テーブル上の調味料は充実している店もあれば、種類の少ない店もあり、 調味料の種類が多いところだと、烏醋=ウスターソースに醤油と酢を混ぜたようなソース、醬油=一般的な”しょうゆ”、白醋=お酢、辣油=ラー油、辣渣=ラー油を作る時にカスとして残る油で揚げた唐辛子、辣椒醬=中華チリソース、香油=ごま油とサラダ油のミックス、胡椒=白こしょう、蒜泥=おろしニンニク、蔥花=刻みネギなどが用意されている。
福州傻瓜乾麵の傻瓜とは華語(共通中国語)で馬鹿の意味だが、この麵料理の名称の由来には以前からいろいろな説がある。例えば、陽春麵=中国式かけそばより陽春=具が何もない、こんな何も入っていない麵は馬鹿しか注文しないからとか、何も入っていない麵を出されたら、普通は騙されたと感じるはずで、こんなのは騙される馬鹿が食べる麵だとか、ある有名な福州乾麵の店の近くに有名な進学校があり、そこの男子生徒がよく麵を食べに来ていたけど、生徒は皆んな制服で同じスポーツ刈りの髪型をしているので、誰もが同じに見えてしまい、店主はいつも誰から代金を受け取ったか、まだ受け取っていないかがわからなくなっていたらしく、生徒たちから「あの馬鹿な親父のいる麵屋」 と呼ばれていたからとか、また、お客さんが麵を注文する時、台湾語で煠寡焦麵 ! (sa'h koá ta-mī)=汁無し麵をちょっと茹でて!と言って頼んでいたのが、台湾語の煠寡と華語の傻瓜の発音が似ているので、いつの間にか華語の傻瓜乾麵(サーコアカンミェン)になってしまったという説がある。
さて、この福州傻瓜乾麵は考案者のルーツである中国福建省福州にもあるのだろうか?もちろん全く同じ名前のものはないようだ。しかし、台湾のようにお客さんがテーブル上の各種調味料(辣椒醬、香油、蝦油など) を何種類か自分で自由に振りかけて、掻き混ぜてから食べる「拌粉乾」と呼ばれるシンプルな極太ビーフン料理があるそうだ。また東マレーシアのサラワク州、つまりボルネオ島北西部にあるシブという名の都市には中国福建省福州出身の華人系の住民が多く、その土地には「乾盤麵」と呼ばれる乾麵があるそうだ。ラードと塩水と何枚かのチャーシューだけが入ったシンプルな汁無し麵にお客さんの好みで紅麹と餅米から作られた米焼酎やマレーシアの調味料、サンバルソースやブラックソイソースをかけ、掻き混ぜて食べるらしい。
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紅麹を使った揚げ物も福州料理でよく見られる調理方法。