インターネットで不快な他者と関わるということ

他者は基本的に不快な存在です。

古代中国の思想家老子は「小国寡民」、国民の少ない小さな国こそが理想としました。インターネットやってると、コレが理想な理由がよく分かるでしょう。インターネットで我々は日々、思想の異なる他者、異様な人格のする他者、攻撃的な言動をとる他者…etcの不快な他者に悩まされています。


結局、人間の快適な環境とは「みんなが同じ価値観を共有している小さな村」に尽きるのです。自分と価値観の異なる他者と関わるのは一般的にはストレスであり、そんな方と関わり合いになるのは誰もが避けたがります。


現実空間でも人間は様々なスクリーニングを経て「小さな村」を作ろうとします。それは例えば受験であったり、サークルであったり、就職であったりし、周りには同じような属性・価値観を有する方々で固まっていきます。

こういった現実空間とインターネットを比較して「インターネットには壁が無い」と評する方もいますが、当然ながら「現実空間にも壁はありません」。
勿論、家や学校、会社等に壁はありますが、そういったパーソナルスペースだけで生きていけるはずもなく、パブリックスペースでも人は生活せざるを得ません。(インターネットに例えると、前者がLINE、後者がTwitterということになるでしょう)我々が不快な他者と接さずに済む環境は、極めて限定された状況下でしか実現出来ないのです。

よくインターネットで「自由に発言出来なくなった!インターネットに馬鹿が増えた!」という方もいますが、控え目に言ってもインターネットは選別されています。
インターネット環境がある、接続機器を扱える、文字を読める・打てる…という3障壁は決して低い壁ではなく、失礼な言い方ですが本当に馬鹿な方はインターネット出来ません。ましてや掲示板やSNS等で情報送受信することは、まず無理です。
誤解を恐れずに言えば、「インターネットに馬鹿が増えた」という表現は全くの誤りであり、正しくは「インターネットに自分は頭良いと思い込んでる、他者に不寛容な方が増えた」です。更に言えば、インターネットの言論空間を不自由にしてるのは、まさに「自分は頭良いと思い込んでる、他者に不寛容な方」に他なりません。

他者に極端に不寛容な方は、不特定多数の他者と関わるインターネットにおいても、自分の意図が正しく伝わる、自分に都合のいい相手とだけ繋がれる、誰もが自分と同じ価値観を有してる…的なことを期待しますが、それは決して叶わない欲求です。そこは現実空間とナニも変わりはないと思います。他者と関わる以上、そのメリットだけを享受することは出来ないのですから。

コノ当たり前の話は「一部の不快な他者には関わるべきではない」と切断処理して思考停止は出来ないと思います。何故なら繰り返しますが、他者とは基本的に不快な存在なので、不特定多数を相手にする限り「不快な他者」の存在は避けようがありません。
そして、そのような前提を無視して、インターネットで不快な他者に恨みを買う、攻撃される事を指して、自身を一方的に被害者として思考停止し、不快な他者を一方的な加害者とすることは大変危険な行為です。何故なら、貴方が不快に思う他者が主観で「私は被害者。貴方は加害者」と認知していた場合、そこから先はもう剥き出しの闘争しかなくなるのですから。ミイラ取りがミイラになります。(インターネットの争いは、客観的にはともかく、主観的にはお互いに「私は一方的な被害者。貴方は一方的な加害者」「私は賢者。貴方は馬鹿」と思い合ってるケースが大半だと、何の根拠もありませんが断言出来ます)

またインターネットで同じ価値観を有する者同士で固まっても、不快な他者によるトラブルを避けられるのか?は、正直かなり疑問があります。何故なら、そうした閉鎖された環境下では往々にして、価値観が共有されてるが故にソレがエコーチェンバーで強化されていき、言動が先鋭化し、傍目には異様な発想が濃縮されていく…所謂「サイバーカスケード」が起きやすいからです。そうした個人又は集団が、ナニかの拍子に露出してしまい、他の個人又は集団と苛烈な軋轢・闘争になってしまうことがTwitter等では頻繁に観測されます。

インターネットで他者とどう関わるべきか?について明確な答えはありません。しかしながら、不快な他者と一方的に悪、又は馬鹿として扱っても問題はナニも解決しませんし、それどころか火種の元に成り得ますし、切断処理していった結果、本人が火種そのものとなるケースも決して珍しくはありません。ある意味では「他者とどう関わるべきか?」を常に問い続けることこそ、答えと言えるのではないでしょうか?

最後に言いたいのは、Hagexさん刺殺事件についてネット民は「ナニも失う事がない無敵の人が~」「中年の無職の劣等感が~」「馬鹿を馬鹿にすると~」的に騒いでますが、犯行告発ブログの内容が正しければ、まさに犯人はそうしたネット民のレッテル張りや集団嘲笑といったイジメっ子気質に怒り、またソレを止めさせたいという正義感で犯行に及んだということになります。なにしろ犯人?自らが「ネットリンチを許さない」と明言してますので。
その為、こうしたレッテル貼りや集団嘲笑といった振舞いを続ける限り必ず第二、第三の事件は起きるだろうと予言して終わります。(犯罪は犯罪を起こした方が一番悪いのは間違いありません。しかしながら、悪い事とソノ原因は別々にして語るべきだと思います)