ミツケタ ☆絵・写真から着想した話 その8
☝🏼このフリー画像から書いた妄想話です
「うっ!」
彼女の頭に触れたとたん、小さく叫んで手を離してしまった。
顔の下半分が露出した彼女の唇から「なにか?」と不安そうな声が漏れる。
──見つけた。二人目だ。
「申し訳ありません。ちょっと手がつってしまって」
「大丈夫ですか」
「はい。もう大丈夫です。一瞬つっただけで。すみません」
「大変ですね。一日に何人もこなすわけでしょう? 手だってつりますよね」
彼女の声は、おっとりと優しい。でも、タオル越しの頭からは、ピリピリと電波を発している。間違いなくディスゾ星人だ。
「お気遣いありがとうございます。もう何ともありませんので、どうぞご安心しておくつろぎください」
私は手首から先の受信パルスを調整した。仲間たちに比べて、見つける確率は低くないほうだと思う。仲間たち──エリピネ星人は、私のようにマッサージサロンの店員や、エステティシャン、美容師、整体師などとなって、日々地球にいる人の頭に触り続けている。仲間は世界中に散っている。未開の土地によっては、まじない師として頭に手を触れている者もある。
彼女──ディスゾ星人は、自分がディスゾ星人だということに目覚めていない。破壊の日の指令がくだる時に、ディスゾ星人は一斉に覚醒して地球の破壊活動を起こすのだ。私たちエリピネ星人は、一人でも多く覚醒前のディスゾ星人を見つけて、覚醒スイッチを切らなければいけない。
破壊の日が近づいていることを知っているのは、私たちエリピネ星人だけだ。地球人に教えたところで、怪しい宗教集団と思われるだけだし、ディスゾ星人は、頭に触れないと見つけられない。
こんな方法で、ひとりずつ覚醒のスイッチを切って行くのは、無駄な努力なのかもしれない。それでも、地球の終わりのシナリオを知ってしまっている私たちは、何もしないではいられない。
掌と指先から、ゆっくりと彼女の覚醒スイッチを切る波動を流し込む。
この施術は、体力の消耗が激しい。視界が薄黄色に霞んでゆく。呼吸が浅くなって、こめかみが痺れたように痛くなる。……もう少し……あと、少し。
プチンという感覚が両掌を弾く。
──覚醒スイッチ切断成功。
タオルを外した彼女は、満足そうに微笑んだ。
「ありがとう。すっごく良かったわ」
「こちらこそ。ご来店いただきまして、とてもありがたく存じます」
「──それにしても、あなた、大丈夫? 額に汗が。だいぶ疲れているみたい。ほんとに一生懸命やってくださったのね」
「はい。本気でやっておりますから。ふふっ」
「なんだか生まれ変わったみたいに心地いいわ。ふふっ」
了