2ヶ月で寿司職人になる魔法。
数年前から話題となっている寿司学校をご存知だろうか? 日本に何校かあるとは思いますが、実は私もその1校に通った事があるのです。
この記事は飲食経験者から見た寿司学校の実態をお伝えしたいと思います。
時は2019年の秋。その年の初めに今でも話題となってる寿司学校として知人から情報を得ました。知人は株や、ITの仕事をしながらUberなどの仕事も敏感に察知して、いつも何らかの新しいものを見つけては挑戦する自由人です。
その彼から2ヶ月で寿司職人になれる学校があるらしい。自分も通ってみたいと思ってると話を聞いたわけである。
ちょうどそのころ当時の仕事である立ち飲み居酒屋のオーナーと折り合いが悪くなっており、そろそろこの仕事も潮時かなと思っていた時でした。
費用は2ヶ月で約80万円(包丁代なども含め)ほど、決して安くないどころか専門学校、大学でさえ年100万位と考えれば結構な学費である。
授業の内容は包丁の研ぎ方から魚の基礎知識、おろし方、ネタの切り付けから、もちろん握り、巻物、押し寿司、玉子焼きなど寿司屋に最低限必要なものがカリキュラムに入っています。時間は午前9時〜午後3時まで。3時以降は自習時間として教室は午後6時まで開放されます。また、当番制で寿司飯の仕込みを授業前の1時間前の8時から3名ほどで行ったりします。
先生方は過去に自分のお店を持っていたり、ホテルの宴会場などでバリバリと寿司を握っていた職人さんです。
教室では3〜4名の班に分かれ、仲間と共に学んで行きます。年齢はバラバラで私の時は下は19歳、上は60歳過ぎだったでしょうか。入学した動機は様々で、飲食業からのキャリアアップや、転職希望、定年後の趣味としてなどですが、ハッキリとした目的で一番多かったのは海外で働くために来た人達でした。バックパッカーや移住を考えてる人達です。折しも年明けにはコロナウイルスが流行し始めたので、今はわかりませんが夢が先延ばしになった方もいたと思います。
受講期間は2ヶ月とあって、授業はかなりの速度で進んで行きます。そのためか、どう考えても1つの班に1名ほど飲食経験者が散らばるように配置されたりしました。単なる偶然では無いと思います。授業は一応は初心者から分かるような内容とはなってはいますが、実技は包丁を仕事で使った事がある人と、無い人では格段に話が違ってくるのはわかりきったことです。
必然的に班の仲間を助ける構図が出来上がります。ある班には元フレンチのシェフが居たり、和食経験者や私みたいに居酒屋上がりの人間と全体の1〜2割は経験者だったのです。
私の個人的な、この学校への感想ですが、経験者がキャリアアップするには少し物足りなく、初心者が海外で寿司を作るにはうってつけの学校だと思います。もちろん個々人の努力や適正もあるとは思いますが、昔から修行で10年以上かけて職人になる技術をたかだか2ヶ月で会得出来るわけがないのです。
ただし、魚の鱗も取ったことが無い人でも、とりあえずは魚をおろして、ネタ切りし、すし飯を作って、握りのようなものを作るところまでは行けます。ただ、それに80万円近い価値があるのか、また、納得出来るような学校組織かと問われれば私は否定します。
偉そうかもしれませんが、この学校には美味しいものを作るという観点が抜け落ちてるのです。ものすごく分かりやすく言うと、味よりも早さや見た目重視の技術を教わります。寿司の味や食感をあまりよくわからない外国人向けや、廉価な寿司屋で必要とされてる技術(それはそれで早さを追求していて凄いのですけどね)です。
だからといって私はこの学校を非難してるわけではないのです。ただし、受講者にそのような説明は一切無く、さも2ヶ月で寿司職人になれますよ的なアピールしかしないのです。
全くの無駄ではなく、得た知識や経験もそれなりにありますが、ちょっと宣伝の仕方が大袈裟かなと思います。
入学を検討されてる方の参考に少しでもなればと思っております。ちなみに先生方は皆、人間的にも技術的にも良い先生だったと思っています。