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BILLY ELLIOT 2024(22)パワーアップしたカムイビリーの大阪公演

耳の奥で音楽が鳴り出してとうとう来ちゃった大阪へ。もちろん追いかけるのはカムイビリーだ。東京公演の10月25日が最後だったので25日振り。17回目の観劇やで!やれやれ~(笑)。

大阪でも集客に苦戦していたのでチケットの売れ行きを毎日調べていたが、どういう訳か11月19日のマチネだけが満席だった。

会場に入ってその訳が分かった。男女混合の高校生だ。会場のSkyシアターMBSには3階席がない。高校生の席は1階席後方の三分のニと2階席の全てだった。まあ賑やかなことこの上なしといった有様で。でも、嫌いじゃない。私には若い人に観てもらいたいという強い願望がある。この素晴らしいミュージカル作品を受け継ぐのは彼らにおいて他にないと思っているからだ。ここに、ビリー役の春山嘉夢一とマイケル役の髙橋維束の名コンビを充ててきたのは大正解だった。

カムイビリーのパフォーマンスは確実で安定感が半端ない。満足度100%!いや大阪まで来たんやで、200%や!

私は「M-1 The Stars Look Down」からもう目がうるうるしている。

鬼門の鍵をグローブでキャッチして「よし!」の声と共に気合いが入る。ここから快進撃が続いていくのだ。

「M-3 Grandma′s Song」に入る前の影絵のワンシーンで見せるターンが美しい。軸足がしっかりしている姿を観て、観劇中の高校生もこのミュージカルが子供だましの劇じゃないことを悟ったに違いない。

第1部の見せ所「M-4 Solidarity」の決めポーズを観て高校生の大拍手と声援が会場に響きわたる。とても心地良い。

大人はイマイチ反応が鈍いというか遠慮がちだ。チケット料金1万五千円も払って、はっちゃけないのはもったいない。私はこの他に交通費とホテル料金が加算されている。それはいいとして、会場に行く着くまでのドラマが笑える。

自宅を6時半に出て、新幹線に乗り新大阪駅に着いたのが10時50分だった。開場まで時間があったので大阪駅近くのくら寿司で昼食を取ることにした。ところが道に迷って時間を食ってしまった(笑)。

大阪駅に戻ったのは12時。SkyシアターMBSをスマホのナビを使って探したが見つからない。ナビを諦め案内表示にあったタクシー乗り場を目指した。タクシーに乗車して行き先を告げたら運転手さんは「どこだろう」と思案顔だったが、5mくらい進んで止まり「後ろのビルですよ」と言われて500円支払ったら運転手さんは申し訳なさそうな顔をしていた。私は感謝の念でいっぱいだった。私は知らぬ間にSkyシアターMBSに向かっていたのだ(笑)。それは天使の導きだったかもしれない。

SkyシアターMBSのビルの外観は東京公演の会場だった東京建物ブリリアホールとよく似ていた。でも、音響はブリリアホールの方が明瞭だった。形状は3階席のないSkyシアターMBSの方が良い。

イツカマイケルの第1部の見せ場は「M-5 Expressing Yourself」だけど彼は歌が上手い。カムイビリーとのタップも息がぴったりで絵になる。花のある彼は芸能界に残りそうな気がする。俳優さん達にも愛されるカムイビリーは冷静沈着で潔いから他の才能を活かして自分らしく生きる道を選ぶかもしれない。それでこそ、ビリーの世界が観えてくる。

「M-6 The Letter」はいつものことだが泣かされる。彼の歌唱には気品が漂う。「母ちゃん」や「父ちゃん」の響きも悪くない。回を重ねるごとに台詞の言い回しも微妙に変わり深みを増して行く。彼の探究心は本物だ。

「M-7 We Were Born To Boogie」は完璧だった。ウィルキンソン先生の背後に入る縄跳びは時間との勝負。これを難なくこなして波に乗るカムイビリー。二重跳びからのタップを加えた縄跳びが速くて目を凝らす。ラストはピアノの上からの宙返り。微動だにしない着地にお客様も大喜び。この舞台と客席の一体感がミュージカルの醍醐味だと改めて思った。

第1部のラストを飾る「M-8 Angry Dance」は大音響のロック演奏が舞台を盛り上げる。作曲家エルトン・ジョンの凄さが伝わってくる1曲だ。四方の壁に閉じ込められたカムイビリーの怒りのダンスでは持て余す場面があったが、大阪公演ではそれがなくなって改善されていた。つまり、パワーアップしていたのだ!

このダンスに対する拍手はビリーが大声を上げて舞台に倒れ込む所から始まり、彼が立ち上がってお客様に怒りの表情とジェスチャーを見せてから舞台袖に入るまで続くのだが、拍手が途中で途切れたため、私一人の拍手が会場内に響くことになってしまった。でも恥ずかしくなかった。東京公演ではそれが当たり前のことだったから。これもいい思い出になった。

第2部の始まりはトニー役の吉田広大さんの募金活動から始まる。
私の席は通路側(花道)に近かったので1番に募金した。広大さんにまじまじと見つめられて嬉しかった。

一つ発見したことがある。目覚まし時計をセットする場面だ。あの時、目覚まし時計とラジカセはワンセットだった。つまり、ラジカセに小型マイクが装着されているということだ。音源は目覚まし時計ではなく音響ブースにあるということ。私の仮説(21)は正解だったに違いない!と思う(笑)。

もう一つ。東京公演時に書かなかったことを書いておきたい。それはフェンスのことだ。ビリーの父親ジャッキーがスト破りをする場面でフェンスがセットされた。フェンスの動きには三つの場面転換があった。一つ目は客席側が炭鉱の外側になる。二つ目はフェンスがスト破りを乗せるバスになる。三つ目は客席側が炭鉱内になる。この場面転換はロンドン版にはない。改めて素晴らしいアイディアだと思う。

第2部最大の見せ場「Electricity」は見納めに相応しい出来栄えだった。満席の中での大拍手と歓声はカムイビリーの勲章になることだろう。この日の夜は良い夢を見たに違いない。私は22回も良い夢を見させてもらった。

再再再演はないかもしれない。だとしたら見納めがカムイビリーで良かったと思う。何故なら彼は天使みたいなビリーだったから!