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映画レビュー短編集(更新中)

小学6年生の時にクラスにいた女の子が好きになったけど告白しないまま卒業してしまった。中学2年生の時に別のクラスになって親交が全然無かったその女の子に後ろから肩を叩かれて言われた。「抜いたわよ」って。廊下の掲示板には中間テストの成績順が張り出されていた。告白しなかった仕返しだとその時思った。
心の内にある思いは溜めておかないで吐き出す勇気が必要だ。その結果が自分の思い通りにならなくても何も残らないよりマシだ。ジョシュ・ハッチャーソン演ずるゲイブのようにほろ苦い思い出が自分を創って行くのだから。

小さな恋のものがたり
2022/06/17 21:30

何の注釈もいらない。ただ楽しめばいい。1作目よりスケールアップして更に面白くなった。謎解きもスピーディーで時間短縮に特化している所がいい。次々と押し寄せる難問をさサクサクとクリアして行くワクワク感が堪らない。冒険の途中、主役のドウェイン・ジョンソンのウクレレの弾き語りを聴いてびっくり。歌手でもやっていける上手さだ!義父と義子の関係、貧しい父と娘の関係、恋心を抱き始めた若い男女の関係、孫の義父と祖父との関係が冒険を通して全てがハッピーになる。底抜けに楽しい映画だ!

センター・オブ・ジ・アース2
2022/06/21 17:26

TSUTAYAのレンタル落ち百円コーナーで見つけたお宝映画のラストシーンの会話を紹介します。
ダニーはピートの友達でジェイコブセンの息子です。ピートはアイルランド系カトリックの8歳の少年でダニーより一つ年上。ピートはユダヤ人のダニーを天国へ導くためにキリスト教に勧誘しますがその一歩手前でダニーは白血病で亡くなります。ラストシーンでピートがユダヤ教の聖職者であるダニーの父親に語る言葉に喪失感の歌を歌う時のヒントが隠されているように思います。

ラビ・ジェイコブセン⤴️
話があるんです。
僕はユダヤ人を天国へ導こうとしました。そして大切なことを学びました。
「どんなことだ?」
神を信じたりイエスに祈ったりするだけが天国への道じゃない
イエスはシンボル
誰の名前で祈っても同じなんだ。正しい行いをする人なら
「面白い考えだ」
だからユダヤ人がイエスの名前で祈りたくないならキリスト教徒と同じにする必要はないよ。別の名前で祈ればいい
「イエスの名前が気に入らないんじゃないが・・・誰の名前で祈ればいい?」
ダニー!それなら天国の探求もやりやすいでしょう?
「きっとそうだな。ありがとう」
じゃあ、またね
「元気でピート」
一番大事なことを忘れてた
「何だね?」
ダニーは天国にいる!
「なぜわかる?」
それが信仰ってものさ

夏休みのレモネード
2022/06/28 19:23

それが作り話であってもいい。真実を言い当てているならば。感動はそうして産まれる。ティモシーのように。
親は我が子を守る。子どもはちゃんと見ている。親を正当に評価しその愛の尊さを学ぶ。そして去って行く。涙を堪えて。それが自然の摂理だから。子どもが子どもでいられる時間は短い。だからこそ価値がある。そうした時間を時折設けてその切なさをかみしめよう。ティモシーが教えてくれたことを忘れないために。“やっと親らしくなれたのに”。二人なら大丈夫。諦めなければどんな奇跡でも起きる。

リリーとお幸せに!
1枚の葉がそよ風に乗って散って行くラストシーンのティモシーの残像がことのほか美しい!!

ティモシーの小さな奇跡
2022/06/30 06:15


ブルーレイで「レ・ミゼラブル ザ・オールスター・ステージ・コンサート」を繰り返し見ていますが「BILLY ELLIOT」とは、全然違います。まあ、コンサート形式なので実際の動きはわかりませんが、ダンスがないのは確かです。「オペラのカジュアル版」といったところでしょうか。
オールスターというだけあって歌は超一流です。代表曲「夢やぶれて」はやはりスーザン・ボイルには敵いません。このメロディーは劇中に何度も出てきます。作曲家も気に入っていて繰り返し使いたかったのでしょう。私は、今までオーケストラ一辺倒で歌が入るのを毛嫌いしてきたのでオペラには興味がなく、唯一見たのは「フィガロの結婚」だけです。でも、ちょっと変わってきました。ミュージカル「BILLY ELLIOT」を見てから総合芸術の素晴らしさに気付き、私の偏見は払拭されつつあり、オペラのカジュアル版もありかな、と思うようになりました。「レ・ミゼラブル」には「夢やぶれて」の他に気になるメロディーがいくつかあります。エポニーヌが歌う失恋の歌。シャン・アコという歌手が歌っていて才能を感じます。
他にテナルディエ役のマット・ルーカスが歌う「宿屋主人のテーマ」?これがテンポよくて手拍子を誘います。この歌手はベテランで完全に舞台を支配します。これが本当のミュージカルスターだと思います。テナルディエ夫人役のケイティー・セコンベもがさつな表現でいい味を出しています。二人の演技を観てると役者ははっちゃけてなんぼの世界なのだと改めて思いました。「BILLY ELLIOT」でマイケル役を好演したザック・アトキンソンはいいミュージカルスターになるでしょう。86歳で亡くなったアン・エミリーのように。こういう才能に出会うと本当に心が和みます。
「レ・ミゼラブル」は最後に派手な合唱曲で大団円を迎えます。これも聴き応えがありますが「BILLY ELLIOT」のようにストンと落ちて来ません。この大団円だけは自分だけが置いてけぼりにされたような感じがして一体感が味わえません。平和ボケした私には共感できない世界なのだと思います。

レ・ミゼラブル
ザ・オールスター・ステージ・コンサート
2022/07/03 08:10

支えがもたらす幸福感

人と深く関わろうとしない38歳の独身男性はシングルマザーをターゲットにしたことで不幸な少年と出会ってしまいます。
少年は精神不安定なママを救うためにあの「人間は皆“島”」を信条とする独身男性に助けを求めましたが拒否されたため彼は自ら社会的自殺を決行することにしました。学校のロックコンサートで母の支えになっている歌をママに捧げることにしたのです。学校中の笑い者になるのを覚悟の上で。ステージに立った少年のか細い歌声は当然観客の嘲笑にかき消されて行くのですが突然ギターの伴奏が加わります。それは少年の社会的自殺を止めにやって来たあの独身男性が人と深く関わる選択をした結果でした。ここで少年の歌声は勢いづきます。
ここで歌われる曲はロバータ・フラックの「やさしく歌って」ですが歌の途中で独身男性の歌声とストリングアンサンブルが加わることで雰囲気がぐっと良くなります。
その後、暴発した独身男性は少年の社会的自殺の肩代わりとなって少年とママを救うことに成功します。
その意味はラストシーンへと繋がって行くのですが、脚本が秀逸で構成に不自然さがないので幸福感に満ちたラストシーンは観客に満足感を与えます。

独身男性ウィルを演じた40代のヒュー・グラントは脂の乗り切った状態で素晴らしいの一言に尽きます。
ウィルが初めて真剣交際を望んだシングルマザー役のレイチェル・ワイズはそのセクシーさで観客を悩殺すること間違いなしです。
不幸な少年マーカスを演じたニコラス・ホルトが“ミスティカル”のラップを口ずさむ仕種は技ありのワンシーンでこのキャラクターに愛着を覚えることでしょう。

この幸福感の余韻に浸りたい方にはロバータ・フラックの「Killing me softly with his song」とエンドロールで流れるバッドリー・ドローン・ボーイの「Samething to Talk About」の視聴をお勧めします。

アバウト・ア・ボーイ
2022/07/15 15:23

タッチダウン

この映画の魅力は一卵性双生児の入れ替わりに劇中の登場人物が誰も気づかないことだ。他人が騙されている光景を見るのは本能的に楽しい。『シックス・センス』のシャマラン監督が私達観客をまんまと騙してほくそ笑んだように。騙す方も騙される方もハッピーになれるなら騙す行為は許される。

騙される側には弱点がある。流れる車窓の風景を漠然と眺めように過ごし先入観からそんなはずはないと決めつけて自分を疑おうとしない。

一卵性双生児は感じる痛みを通してお互いの境遇を知ることができる。これは生き別れの二人がもとの鞘に収まる為に必要な能力の一つだがこれ以上に分かつことのできない兄弟愛の絆がトラブルを乗り越え幸せをつかむ。上手く行ったときの二人の合言葉“タッチダウン!”は何度聞いても心地好い。

トムの“大丈夫?”に答えるトーマスの義父のセリフ“何だか前に会った気がする”も洒落ている。

養子になったトムが初めて口にした“パパお願い”に“言ったね。今パパと呼んだ”とトーマスが冷やかすと“呼んでいない”と否定するトムに対してトーマスは追い討ちをかける。
“でもパパだよ”
殊玉のセリフにタッチダウン!

アーロン・ジョンソンの演じ分けも見事だった。

トムとトーマス
2022/07/31 21:07

自己犠牲がもたらしたもの

クリスチャンは父親に言った。「初めが大切なんだ」と。この映画の全てがここから始まる。まだ子どもだからきちんと説明しなくてもいいと考える大人はいじめっ子と何ら変わらない。だから復讐の対象になる。相手に自分の存在を認めさせるには復讐するしかない。

クリスチャンはいじめられているエリアスを身を挺して守る。それは死ぬ覚悟が出来ているからだ。父親が大好きなエリアスは次第に父親の無抵抗主義に疑念を抱くようになる。

エリアスの父アントンは相手に自分を殴らせて子どもたちに無抵抗主義の意義を分からせようとするが子どもたちは納得しない。それはアントン自身にボーダーラインがあり迷いがあるからだ。

納得のいかないクリスチャンはエリアスの父親を殴った相手に復讐するが自分のした愚かさをエリアスが取ったとっさの行動に胸を打たれて改心する。死ぬ覚悟のないシリアスが身を挺して人の命を救ったからだ。自分にはできなかったシリアスの自己犠牲はクリスチャンの頑な復讐の心に風穴を開けた。

父親から母の死についてきちんと説明を受けたクリスチャンは母の死を受け入れ父親の腕の中で大粒の涙を流した。今まで胸にしまいこんでいた悲しみを思いっきり吐き出すように。

今頃はきっと命の危機を脱したシリアスと本物の親友になって仲良く学校に通っていることだろう。

未来を生きる君たちに
2022/08/12 14:02

クリスチャン
エリアスのパパだ
クリスチャン
そこから離れて
こっちへ来るんだ
クリスチャン

アントンは囲壁のないビルの端に立って身を投げようとするクリスチャンを安全な場所に引き戻した

エリアスは回復してる
また元気になる
エリアスは大丈夫
だからここに来たんだ
重体ならそばにいる
すぐ元気になる
信じてくれ

なら殺してないの?

そうだ

死んだと思った

生きてるよ
元通りになる
心配いらない

想像できなかった
子供は死ぬと幼くなる

誰が死んだの?

大人も死ぬと子供みたい
ママが死んだときも若く見えた
まるで少女のようで別人だった
ママが恋しい(大粒の涙)

生きている者と死者の間には見えない幕がある
愛する人や親しい人を失った時にー
その幕は取り去られる
死を見るんだ
とてもはっきりと
でもほんの一瞬だ
その後
幕は元の場所に戻り
私達は生きていく
以前と変わらずに

信じていい?

ネタバレになるので書けなかった
珠玉の台詞
未来を生きる君たちへ

息子と向き合う覚悟

テーマからすると誰もやりたがらない崖っぷちの映画だと思う。だから敢えて制作する意義があるとも言える。綱渡りのような絶妙なバランスが求められるが故に脚本は熟考に熟考を重ねてよく練られていると思う。
アントン・イェルチン演じるクエンティンを失望させることで主人公は誰の手も借りずに一人で自分の息子と一生向き合わなければならないことを悟る。息子の作った歌を届けることが彼の使命になるのだ。誰に何と言われようとも俺の息子なのだから。
主人公のサムを演じるビリー・クラダップとアントン・イェルチンは吹き替えなしで演奏している。ギターの名手であるビリーと自分のバンドを持っていたアントンの演奏能力は高い。全曲聞き応えがあるがラストの曲は息子を思う親心が切なくて複雑な思いになる。

だからと言って「曲には罪はない」と言い切ってしまうような安っぽい映画ではない。

君が生きた証
2022/09/24 21:12

カッコいい生き方

神隠しにあう前の千尋は魅力的な子じゃなかった。甘ったれで、人任せ、自分の力を半分も出してない、生き方が後ろ向きで、自分の不平不満を他人のせいにしているような子でした。
その千尋が、魔女のユバーバに魔法をかけられて豚にされた両親の姿を目の当たりにして、目覚めます。
両親を助けられるのは自分だけだと悟った時、彼女はしゃんとします。覚悟ができると人は強くなる。だから、独りになっても、寂しくても、千尋はユバーバの湯屋“油屋”で一生懸命に働きます。両親を助け出すために。勿論、最初はぎこちなく、冷や冷やものですが、ハクやリン、カマジーに支えられながら、次第に逞しく、成長して行くその姿は健気で感動的です。
そして、千尋はハクを助け、寂しがり屋のカオナシも助けます。ユバーバの油屋で働く人達みんなを味方につけ、映画を見ている観客も味方につけ、遂にユバーバから自分の名前を取り戻すことに成功します。千から千尋へ。
実は、ユバーバの油屋で働かせてもらうには自分の名前をユバーバに預けなければならなかったのです。だから油屋では千尋は千と呼ばれていました。名前を預けられたユバーバは千尋を自分の思い通りに出来ました。生かすも殺すもユバーバ次第。つまり千尋の命はユバーバに握られていて自分ではどうすることも出来なかったのです。
千尋が名前を取り戻したということは、自分の命を自分の手でしっかり掴んだということを意味します。ここがカッコいいんです。自分の命を人任せにしない、自分の命は自分で守るんだ、自分の人生は自分で切り開いて行くんだという決意と覚悟。その決意と覚悟が両親を救い出すことに繋がるんですね。
神隠しにあう前の千尋は魅力的な子じゃなかった。でも、ユバーバや油屋の仲間に助けられながら千尋はかっこよく大変身します。

かっこいい生き方の証は何なのか?

映画を鑑賞して自分自身が問われているように思いました。

千と千尋の神隠し
2022/10/10 09:58

ミステリー小説の醍醐味

自分を神様だと思い込んでいる自信家ほど騙されやすい。超売れっ子のミステリー小説家はセクシーな小娘にまんまと騙された。それが余りにも巧妙なので怒りを覚えるどころか尊敬の念すら抱いてしまう。越してきた部屋に飾られていた十字架を外した自分の愚かさを苦笑する。ラストシーンの種明かしは見事な出来でこれぞミステリー小説の醍醐味だと久々に感動した。

スイミング・プール
2022/11/09 09:40

愛の真髄

自立するために母親は息子を家に置いて家を去る。シングルファーザーとなった仕事一筋の父親は仕事と子育ての両立を余儀なくされ、重役を約束されていた会社から解雇されたがその代わり息子との絆を深めることができた。
自立を成し遂げた母親は息子を取り戻すために訴訟を起こし親権を勝ち取った。
父と息子がお別れする日のシーンは何度観ても涙が込み上げてくる。18ヶ月の間に育んできた父と子の深い愛の絆が描かれているからだ。
母親は息子を迎えに来たが息子を家に留め置くことにした。何故ならここが息子のお家だと気づいたからだ。
息子にそのことを告げるため一人エレベーターに乗った元妻に息子の父親は言う。「(君は)素敵だ」って。愛の意味(限られた時間をどう使うか?)を知った二人の微笑みに明るい未来の予感を残しながらエレベーターの扉は静かに閉まる。そこで暗転。

感動の余韻を残すお手本のような終わり方(結末)にも感動させられる。それが名作中の名作たる所以でもある。

クレイマー、クレイマー
2024/06/04 06 :10