悲劇からの再生
この記事は映画『テラビシアにかける橋』のレビューです。
判断が人生を決める。後悔は悲劇そのもの。
主人公のジェスは自分を認めようとしない現実の世界に不満を抱いて毎日を過ごしていた。そこに転校生のレスリーがやって来る。二人には友達がいなかった。「君の楽しみは何?」とレスリーに聞かれたジェスは答えられない。そんな彼をレスリーは現実の世界とリンクした痛快な空想の世界「テラビシア」へと導く。そこには空想の世界で心弾ませる時間を共有する幸せな二人の姿に共感する私がいてこのままずっとあの光景が続けばいいのにと映像に浸っていたのにまさかの展開に胸が張り裂けそうになった。私をこんなに感情移入させた映画は他にない。
ジェスが絵の具を川に流すシーンはレスリーを美術館に誘わなかった自分への怒りを象徴している。彼はレスリーの死を受け入れることが出来ずに苦しんでいた。そこへ最後の敵「黒い影」がジェスを襲う。その影は自分を認めてくれない父だった。父の腕の中で彼は自分の後悔とレスリーを失った悲しみを吐露して大粒の涙を流す。父はジェスの額にキスをして息子を優しく包む。それでやっとジェスは彼女の死を受け入れ父との確執にも終止符を打つことができたのだった。
ジェスはレスリーが安全にテラビシアに行けるように丈夫な橋を作った。それはレスリーを守ってあげられなかった後悔ともう一度レスリーに会いたい強い恋心とレスリーの“心の目を開いて”の教えとそれを大事にしたらあの子は死なないと言ってくれた父の言葉に従ったからだ。それは悲劇からの再生にファンタジーが欠かせないことを物語っている。だからと言ってこの映画を成長物語と片付けてしまうのはもったいない。悲恋物語として捉えた方が芸術的で奥深い。恋しい二人の瑞々しい生命の息吹きが蘇ってくる。
ジョシュ・ハッチャーソンのナイス-ガイさとアナソフィア・ロブのクールな可愛さはこの映画の至宝だ。ジェスに手を振るアナソフィア・ロブの最後のあのチャーミングな笑顔が忘れられない。
(See you)