武井彩佳『歴史修正主義』
『帰ってきたヒトラー』がある。『帰ってきたムッソリーニ』もある。
日本なら誰が帰ってくるべきか? そんなことは考えてしまいます。『青天を衝け』をみていると、『帰ってきた徳川斉昭』でよい気がしてきましたが。私は後期水戸学なんて危険思想だと思っておりますが、無邪気に礼賛している人たくさんいますしね。
いいから本の感想を書け! そうなりそうなんだけど。またひねくれているので、ちょっと別のアプローチで。
歴史修正主義者のやり口は手垢がついたものだ
本書は役立つ。
巷にあふれる歴史修正主義者のお決まりワンパターンが大体網羅されているから。
被害者に対して「どうせ金目当てでやってるんでしょ」と冷笑する。これは日本人だけでなく、ヨーロッパでも散々やられてきたと。それで閃いたことがある。
会津の観光史学。私が大嫌いなコレ。そんなもん、歴史観光なんてそりゃそろばん弾くものなのに、なんで会津だけネチネチ冷笑攻撃にあうんだべ? 歴史修正主義者の長田まりのやり口だな。
会津叩きをSNSで小鼻膨らませながらして、いかにも俺はあいつらの虚飾を剥がしてやった! 歴史通だ! 大河は毎週見てるぜ! あの研究者先生とも相互だ!……みたいなの。既視感ありまくりだなと思っていたけれど、やっぱり手垢ついているんですね。
歴史修正主義者がどうして冷笑系のニチャアとした粘りがあるのか。それも国際的かつ普遍的な現象だとわかってうれしい。本書は読んでいるとムカムカして、本に罪はないのにひきちぎりたくなったり、叩きつけたくなったりした(やらんけど)。そのいらつきの正体はわかってます。
あの、ニチャアとした冷笑。その正体を暴いてくれているんだな。なんか俺すげえ新しいこといっちゃった、タブーに挑んですげえ! そういうのが全然新しくもないと暴いてくれているんだな。ありがたい。
あつかっているのはヨーロッパ近現代。しかし手口は幅広い。これは実に有用であるし、切なくもなりました。
自分達はすごいタブーに挑んでるんだぜ! そう思っているあれやコレやの手口が、こんなにも使い古されているとは。