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『おちょやん』95 千さんの去り方
昭和23年(1948年)、家庭劇と万太郎一座が合流して鶴亀新喜劇が生まれます。
失敗できへん!
しかし、稽古場Aに千之助はいない。思えば戦前は千之助が暴れ放題だったのに。どうしたのか。千代に主役を譲って、みつえの岡福で昼間から飲んでます。ほんで千代が押しかけて「なんでセリフがど狸なのか?」と聞いてくる。しかも酒まで飲んでごぉーっと声をあげるわ。大暴れですわ。
千代は自宅に戻っても悩んでる。絶対失敗できへんと。しまいには暴れ出して一平に止められてます。そこへ寛治が千代あての花を持ってきます。匿名のその人も生きとったのかと千代はいう。せやせや、空襲があった。戦争を挟んでいるというのはそういうことです。
一平はそれを見て、することは変わらないという。一生懸命、芝居するだけやと。
そして『お家はんと直どん』当日。
家柄を超えて結婚したい若い男女。ところが、その親同士が駆け落ちを誓いながら叶わず、恨み続けていたのです。かくして四十年ぶりに再会する二人。
この劇中劇がかなり長いし、主演二人が加齢演技をするし、観客もライブ感のある反応ですし、相当凝っていて大変だったと思います。ほんで杉咲花さんも成田凌さんもうまくて、お上手で、見ていてかえって不安になるっちゅうか。何十年かあとでもこういうふうに、もっと磨きをかけていそうというか。すごいものを見た!
しかも一平は、新しい世の中を引っ張っていけと後進に言い切る。劇中劇とその外の世界、そして現実までひっくるめて励ますような、騙し絵のような不思議な何かが生まれます。
新しい幕開けと、去る名優
そして終演となると、客席も大喜び。みつえも声をかけてしまう。
あの大山社長も子どものようにばんざーい! これには熊田もびっくり。そうそう、この社長の反応が楽しみですわ。
「道頓堀喜劇の、新しい幕開けや!」
熊田も「はい!」と力強く言い切るのでした。
その夜、終演後の舞台には千之助がいます。深々と一礼して去ろうとする千之助に、一平が「どこいきはるんですか」と声をかけるのです。
千之助はやれるだけのことはやったと引退をほのめかす。千代はこれからどうすればええのかと問いかける。でも千之助は、俺がいなくてもやったと言い切る。
そして天海こと一平に、お前の父ちゃんにやっと義理果たせたという。一平は深々と頭を下げて礼を言います。
千之助が舞台から去ろうとすると、劇団員たちが追いかけてくる。すると千之助は「やかましい!」と怒鳴ってから指パッチンをします。
千之助さん、おおきに。
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『週刊おちょやん武者震レビュー』
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