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『おちょやん』3 子は智勇兼備、大人は堕落…

 栗子はおらん。お父ちゃんも探しに出かけて、また十日間いない。なんちゅうこっちゃ! 千代はお隣の小林さんの家に報告しております。

末恐ろしい智勇兼備・千代

 千代は、栗子は戻るはずだとズバリと言い切る。なんでか? 商売道具の高い三味線を置いていったからですな。当時はアレやね、猫の皮張っとったと。そう言い切ると、小林さんとこの人は栗子の女狐っぷりを指摘するわけですが、黒子は末恐ろしいのは千代だと指摘します。
 これは重要やで!

 NHKにはどうにも、2010年代半ばから人間描写に磨きをかけとる。その成果として、人間の性格は幼年期にできあがっとるちゅう認識があるわけやな。『麒麟がくる』の家康が好例です。あの狸と呼ばれる老獪さ、慎重さ、観察眼。全部子役時代にできあがっております。
 朝ドラでも鈴愛と律(『半分、青い。』)、夕見子(『なつぞら』)、喜美子(『スカーレット』)が顕著にできあがっております。それが成長して世間にあわせ、空気を読むことでかえって歪むけれども、一周回って戻ってくる。
 千代もできてますわ。この、小さな要素を観察して推察する。末恐ろしい奴です。
 普通の、これまでの描き方なら、ヒロインは涙ぐむなり、心細そうにしていてもよいはず。かわいくないやろ? こましゃくれた口で「あの女は戻って来るで〜」ってなんやねんこいつ。ご安心ください、途中でちょっと色気付いて変わるかもしれませんが、終盤もこんな感じになってますわ。
 こんな子どもがいてたまるかい! そう思うとすれば、見る側がかつてそういう子どもでなかったか。そういう子どもが自分に心開かないで猫かぶってたか。そのあたりですな。
 
 小林家のおばあちゃんがいい味出しておりますが、かしまし娘・正司花江さんですね。関西のレジェンドをさらりと入れる本作に期待が高まりますわ。

白い首の女・栗子

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2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.com/

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