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『おちょやん』40 芝居を続ける理由はまだ残っとる

 千代の部屋からテルヲは通帳を盗み出す。そしてちょこっと借りて返すと言い張るのです。借金返したのは嘘なのかと千代はすごみます。果たしていくら? 借金は500円!
 大卒初任給が73円の時代です。これまた結構な金を借金してます。千代は博打やと見抜くのでした。ご寮人さんに借りといてどういうつもりかと凄む千代。

金の切れ目が縁の切れ目

 ヨシヲはここで太々しさを全開にする。ヨシヲが現れんのはどういうこっちゃと。テルヲですら見つけて来るのに、来ないならそのつもりがない。それか野垂れ死んどると。
 おっ? 『なつぞら』に生き別れのきょうだいあれば、『おちょやん』にもありよ! なんだろう、嫌なリアルさがあるっちゅうか。そういえばそうなんですよね。
 しかもテルヲは、パッとしないからこの程度の稼ぎしかないといいよる。ろくに学校も出ていないで、女の身で、食べていけるようになるまでたいしたものでしょうに。そういう発想はないんや。
 救いは横で聞いている真理が、どれだけ千代が苦労して貯金しているかかばってくれること。宮元が映画撮影のふりをして、冗談にしようとすること。千代は自分の力で得た人間関係で救われているとわかります。道頓堀でも、京都でも。
 千代は笑い出します。もうええ、持ってき。そう金を渡して,小銭までくれてやる。投げるのです。
 親子やない。血でなく金で繋がった縁。これですっからかん。金の切れ目が縁の切れ目。そう吐き捨てる千代です。
 ヨシヲをみつけたら、二人でお父ちゃんを説得してまた三人で暮らしたいと思ってはいた。けれどももう、ありえへん。女給として生きていく。ビール販売競争で一位を取ったるとふっきるのです。
 そこへ開店前なのに小暮が来ます。店の裏で、今月には東京の実家に帰ると告げるのです。そのうえで、結婚しようと言ってきます。これにはドアの裏で立ち聞きしとった女給たちもびっくり!
 千代はビー玉をかざして、おかあちゃんに語りかけます。生まれて初めて好きと言われた。あんなええ人で。うっとりとそう語ります。
 けれども、テルヲ以来のモヤモヤがあるのも確か。
 このドラマ、そして千代は何かおかしい。こう、突き破る何かを持っとる。

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2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.com/

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