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『おちょやん』36 テルヲ生きとったんかワレ
竹井千代19歳、いろいろあって鶴亀の撮影所に入り込み、大部屋女優の中堅どころになりました。コングラッチュレーション! それから三年、元号も変わりまして時は昭和3年(1928年)。千代はどうなったのでしょうか?
女優業でっか? ボチボチでんな
千代は幹部はおろか準幹部でもない。セリフもボチボチあり、役がついてボチボチ、ボチボチ……改めて黒子の言葉で思う。ボチボチてなんやねん。ここで千代が第四の壁をぶち破り、黒子に「何しとんねん、さっきからボチボチボチボチ!」と怒ります。河内弁で育った千代ですので、パンチがあります。
ボチボチというのも、なんとも冴えん話ちゅうか。世界恐慌の煽りで、日本も巻き込まれとる。鶴亀もヒットせず、不況の煽りで首を切っている状態です。絹江も歌子もおりません。
うわっ、なんか嫌な予感がしてきましたで。この不況をどうにかしようと思って世界中が動いた結果が、第二次世界大戦にもなるわけでして。このドラマは、戦災のもとでの芸能界史をきちんとやると信じています、といっても、どんなにどす黒くとも『わろてんか』と『エール』のモデルによる軍事協力ほど黒くならんさかい。そこはええと思う。むしろ鶴亀のモデルである松竹はえらいと思う。『わろてんか』のモデルが引っ掻き回した上方落語を、きっちりつないでいったのは、松竹の力もあるのです。
そういう不況で、芸能界はどうなるか。生々しい話が見えてくると。
個室を持っていて、機嫌を損ねると出てこなくなる幹部女優・滝野川恵がおります。実力があるというわけではない。ビッグスポンサーの御令嬢なんだとか。
ジョージ本田の妻であるミカも、彼女には怒っています。それでも立てなあかん、実力主義だけではない芸能界の生々しさが出ていて嫌なもんを見たような気がします。
小暮もボチボチ……やろか?
そんな中、小暮はまたも脚本が却下されたそうです。千代を主演にできないと詫びるのでした。生き別れの兄と妹が再会する話だそうです。
「地味やなぁ」
千代はそうズバリと言う。やっぱり教えるんじゃなかったと小暮は参っている。あれから三年、千代は癒すだけの優しい女の子ではなくなったのでしょう。そこへ守衛の守屋が来て、千代に来客があると告げます。ただ、なんだかその来客は不審なところがあるようです。
来客の名はヨシヲ――そう聞いて千代は飛び出してゆきます。
ここも因果ではある。生き別れのきょうだいが再会する話って、それはまさに千代とヨシヲのことではある。それを地味でヒットしないと言い切る千代。意識しているわけでもなく、むしろ共感を突き放してしまっている。
当時はそういう人が多くて凡庸だったとも考えられますし、キャッチーなネタが受けることは今も昔もそうということかもしれない。
さて、ここでヨシヲが出てくるのか? もう嫌な予感しかしない。
テルヲ再登場! 誰も待ってない!!
もうわかっとったな。そこにおったのはテルヲ。生きとったんかワレ!
弟の名を騙った父に激怒する千代。ヘラヘラとして無反省、しかもばったり倒れて腹を鳴らすテルヲ。もう簀巻きにして鴨川に放り込みたいところですが、そういうわけにもいかない。千代はうどんとお稲荷さんを食べさせています。
関西らしい汁の色が淡いうどんを、ずべべべと下劣にすするテルヲ。それはええと思うよ。上品に食っても違和感あるしな。それよりも、NHK大阪朝ドラチームが、昨年に続き無茶苦茶うまそうな関西のごはんを見せてくるところが気になってしゃあない。
テルヲ、反省なし! 三年前道頓堀でちよに裏切られたとかほざいとります。なんで千代が悪いのか? むしろ「岡安」の御寮さんことシズに借金立て替えてもらったと千代は怒る。そのせいで道頓堀にいられんようになったのに! そう恨みしかない。それでもテルヲは、シズを観音様の化身だなんだとヘラヘラ言うばかり。こいつに借金を返すつもりなんかあるわけないやん。そのうえで一緒に暮らすと言い出す。千代は信じるわけもない。
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