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『おちょやん』45 女形で考える変革、そして差別

 一平は断言します。自分の喜劇に女形はいらない。女は女優が演じる。周囲は困惑し、ボンが何言ってんのか疑い半分,冗談で済ませようとします。
 一平は理詰めで変革を意識している。
 一方で周囲からすれば、天晴や徳利とちがって裏切っていないという義理人情があるのです。

女形でなく本物の女優で

 一平は言い切ります。歌舞伎やシェークスピアのような劇をめざす。10年後も50年後も忘れられんものを作る。そのためには、見る側が感情移入できた方がええ。そのためには女は女優が演じなければいけないというわけです。
 確かに女形は、作り物じみてはいるかもしれない。漆原という役者ではなく、女形そのものがいらないと一平は言い切ります。男を演じて欲しいのだと。

 衝撃的な宣言のあと、道頓堀を鼻歌歌いつつ歩く一平がいます。千代はおっかけつつ、辛いのに鼻歌歌うなという。一平は辛いからこその鼻歌だと涼しい顔。喜劇と一緒や。そうつぶやきます。
 すると裏口が開いて、菊が顔を出します。うるさいから中に入れという。客引きですがな。一平と千代はコーヒーとミルクセーキを頼みます。福助も元気そうやし、福助もトランペットがうまく吹けるようになってます。千代はミルクセーキ飲んでる場合かと言いつつ、おいしいらしい。ちなみに関西喫茶店といえばアレちゅうミックスジュースは戦後やで。
 一平は岡安の話をします。ごりょんさんのシズは、富士子に暇を出さないといった。経営を考えてそうしようとは思った。けれどもそれはのれんをおろすとき。面倒見ると言い切ったというのです。
 自分とは逆。そう一平は言います。
「どないしたらええんやろ……」
「しらんわ!」
 千代はそう返します。

義理人情を天秤にかけて

 これも合理性と人情を天秤にかけとるわけやね。合理的にチャチャっと首を切るか。それとも人情を重んじてそうしないか。どちらがよいのでしょう?
 問題提起を感じます。それというのも、朝ドラは人情重視だとは思っとったで。理詰めで経営のためにリストラする悪役。ピンチに陥る周囲。それをヒロインが機転で解決! そうなると。
 一平は悪役の要素を持っているとは思います。なんのかんのでボンボン。女遊びをもう覚えてる。そしてこの漆原への仕打ち。これをどうするのか? そこが見せ所やね。NHK大阪は自身満々でしょう。『スカーレット』八郎は、ヒロインの前に立ち塞がるような要素がありながら、とびきりチャーミングでした。ベタなイケメンだけでない何かを作っていけます。『わろてんか』で不完全燃焼だった成田凌さんを再度起用した意義も感じるで。
 実際、もう一平には、端正な色気と腹立つ聡明さ。そういう矛盾する魅力がありますからね。
 
 漆原は女形仲間のところにおります。おっちゃんがたくさんいて、むっとするような化粧をする、そんな珍しい場面です。
「うっとこおいで」
 そう誘われるものの、漆原はあの人らとでないと芝居をしたくないと返すのです。

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2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.com/

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