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『おちょやん』5 “普通”じゃないから、かぐや姫は戻らなかった

 栗子と千代の戦いは続く――奉公に出そうと企む栗子に、一歩も引かぬ構えを見せる千代。しかし、テルヲは奉公話を立ち聞きされたと知って「タチが悪い」と駄洒落を言うばかりなのでした。
 せやで。せやけどな、朝ドラは立ち聞きせんと話よう進まんのよ。

栗子、男心を絡めとる

 女の黒髪が、男の心を絡め取るなんて申しまして。栗子は“女“を前面に出してきました。まずは、上方風のおいしい料理を作る。料理できたんかい! 小料理屋で働いてたってよ。現代では小料理屋というと、なつかしくてホッとする和食屋さんですけど。当時はそれだけでもない。

 これも日本の住宅事情やな。狭い日本の家屋で逢引きはできひんし。そういう色っぽいニュアンスはあるわけやね。いわば非日常がそこにはあると。そんな味を作られたら、胃袋以外もぐいぐい掴まれます。しかも栗子は色っぽい。小料理屋で働いていたと褒めるテルヲにてれるように、ちょっとだけ身を起こして手首の先をチョイと猫のように振る。和服ゆえの動きで、洋服ではそうはならん。伝統的な色気がある。そんな栗子の色香はムンムンと伝わるわけでして。
 小林さんの辰夫はじめ、おっちゃんどもが唄を聞かせてくれとやってきます。ここで露骨にデレデレするおっちゃんに、硬派気取ろうにも無理なおっちゃんに。栗子に一人一銭と言われて「かなわんな〜!」と言われつつも、もうはらわたドロドロにとけとんねん。こんなノーガードなエロ顔を見せてなにを考えているのか。ええんちゃうか!

 でも、千代にも学べることはある。
 芸は銭になる!
 栗子はなーんも食べられるもんは出してない。三味線と歌声だけ。それでも金を稼げる。それは大事なこと。

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2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.com/

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