『おちょやん』30 大部屋女優の第一歩
鶴亀撮影所では、小暮という若い男がいました。シュッとした木暮に「女優の竹井千代さん」と呼ばれ、舞い上がるような気持ちの千代。ふわふわした高揚感が、杉咲花さんの顔に浮かんでいます。
撮影現場はまるで夢の世界! 綺麗な人たちが颯爽と歩いています。絶対入る! そう決意を固める千代ですが……この先は伏魔殿かもしれへんで。気ぃつけてな。
大正時代は褌ですので
撮影所には、片金平八という褌男がいます。ソファにはスカした髭の男・ジョージ本田もいる。原点回帰っちゅうか、そもそも芸能界は胡散臭い奴らばかりだということを思い出させてくれます。片金に扮する六角精児さんから、ちょっと金子信雄さん(山守親分ですわ)のテイストを感じてしまった。ええんちゃうか、最高ちゃうか。
なんでもこの片金さん。褌からプライベートパーツがはみ出すことをジンクスにしているらしく……ええんかそれ、放送コードギリギリやないか? キーンというSEやめてえや。こんなん音響さんはどんな気持ちでSE探せばええの? アレっぽいお笑いの音。定番であってプロ野球珍プレーで使うとは思うけど、そんなん朝ドラで!
NHK大阪も、リアルな褌事情を見せてきました。数年前、やたらと若い男優に褌を着せて寝転ばせ、「なんかいけない気分になっちゃう❤︎」とかいうSNS投稿狙ってた朝ドラあったんですけど。褌は緊褌一番なんて言い回しもあるように、ゆるめたらガードがスカスカになるものなんです。なので、萌え〜だのほっこりきゅんきゅんどころか、一歩間違えたらあかんもんですわ。神輿で担ぐ男性の褌は気合入ってますやろ。そういうリアルな、誰も求めていない褌事情を出してきて、一体何がしたいのかわからへん……いや! 芸能界の魑魅魍魎ぶりを描きたいんやろなぁ。ええ心がけや、ほんまに。
ジョージ本田は、そらもうそういうインパクトに負けてはいけませんからね。アメリカ帰りというだけで監督になっとる、と黒子が割と嫌味にもなりかねん説明を入れてきます。そして言動がいちいち“バタ臭い”。今ではバターは香ばしいものとして愛されていますが、かつては西洋かぶれで臭くてかなわんと嫌いな人が多かったものです。マイナスのニュアンスでの静養かぶれとして「いややわ。なんやバタ臭い」と使ったわけですね。そういう意味での“バタ臭い”男を堪能してください。勉強になるええドラマや。
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『週刊おちょやん武者震レビュー』
2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.c…
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