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『おちょやん』57 ヨシヲ、生きとったんか!

 舞台上で千代に口付けをしてしまった一平。そこへ巡査が舞台上へあがってきて、その日の芝居は中止になってしまいます。どないすんねん! 千之助ですら困惑しておりますが……一平本人すら呆然としたまま去っていくのでした。

唇を奪われるわ、検閲は入るわ

 岡安のかめ筆頭としたお茶子は、千代のメンタルケアをしております。気付け薬を飲んで忘れろと。まあ、中身は生薬入れた酒あたりやろなぁ。かめがええ味出しておりまして、気遣いつつうっかり「唇」なんて言ってしまうので、周囲がぎゃーっとなってしまいます。このへんのわちゃわちゃ感のテンポがよくて。NHK大阪がほんまにやりたかったことだと思えます。楠見薫さんがええ味出しとる。

 警察の検閲は、とりあえず初日ということでなんとかなったようですが。一平はここでちょっとほんまのことをしたいだけど不穏さは出すのです。
 警察もなんかこう、変わりましたよね。ヨシヲの行方不明になったころよりも威圧感を増したっちゅうか。
 もともと日本の近代以降の警察制度はフランス流でしてな。それが自由民権運動弾圧、日比谷焼打事件なんかを経て、締め付けがギュギュッと強くなっていく。茹でガエルちゅうのこういうもんで、しょうもない舞台の口付けすらキャアキャア言われるようになっとると。昭和初期っちゅう時代背景を考えると、なかなかうまいし怖いことすると思う。
 不穏ちゅうたら一平も。頭はいいけど、不器用で、しかもほんまのことをしたい。
 一平……なんかこうなぁ、『わろてんか』主人公周辺、『エール』の音楽家たちのようにはなれへんような気ィがする。そら政治家でも活動家でもないやろし、本気でお国に逆らうようなことはないでしょう。けれども、戦時中精神がバキバキにへし折られる予感はある。これはみつえと福助のジャズ好き夫妻もやけども。

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2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.com/

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