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『おちょやん』44 一緒に酒飲んで、飯食って、演じる仲間

 1928年(昭和3年)、道頓堀で喜劇をやる。となると、楽しいようで地獄のような条件もあった。最初の公園で失敗したら解散、二度と道頓堀の舞台に立たせん! そう鶴亀の社長は言うとるわけです。どうするどうする!

万太郎一座に向かう徳利

 その一座に、とりあえず一平の脚本に感動した天晴が戻ってきます。
「ボンもいけずやな〜」
 一平から脚本を読ませてもらなかった漆原は拗ねる。天晴は自分は特別だと言い出すのです。そうして男三人でわちゃわちゃしとります。何気ないようで、イケズという言葉がちょっと引っかかりますが。
 そこへ千代が戻り、にっこり笑ってから何じゃれてんねんと怒っております。天晴は雨降って地固まるやとあっけらかんとしておりますが。
 千代は苦労したのです。千之助の前で猫、タコ入道、するめ、鶏の真似をした。殴ってええかと言われるまでそうしていたと。それを聞いて一座は、そういえば千之助はニヤリとすることはあっても笑わなかったと振り返るのでした。喜劇役者だからこそ笑わんというのは考えられることですが。千代はそれをはよ言ってくれと悔しがります。

 それでも一座はまだ足りない。徳利は別の劇団、万太郎のところへ行くとか。ここで千代と天晴は慌てて止めに行きます。そして舞台の上で行くな、行かせろと言い出す。そこを一ニ九に何しとんねん怒鳴られるのです。
 その後ろには、落ち着き払った様子の万太郎がおります。スーツを引っ張ると避けて、真っ二つになって、褌一丁になって、そこに浴衣を身につける。スーツどないなっとんねん! そう突っ込みつつ、それよりも見事かもしれへんと思ったのが和服の着こなしでして。たかが浴衣、されど浴衣っちゅうか。帯を占める重心が下の方にあって綺麗で。これぞNHKの着付けやな、と思うたで。成田凌さんも着付けと身のこなしがとても素晴らしくて、NHKが和装の着こなしを継承していかなあかんという思いを持っとることが伝わってくる。
 千代はこう言ってしまう。
「ようわかれへんけどすごいな」
 これも大事やで。なんか知らんけど大物ぽいちゅう味を出すのは演じる側でなくて、周りも大事で。そういう空気がよう出てはる。

昭和のアルコールハラスメント

 そのころ、漆原は一平に昨日何か言いかけたと問いかけています。そういえば天晴がやってきて有耶無耶になっていましたっけ。
 一方の岡安では、シズに対して富士子が辞めると切り出しています。組見をやめた客が今年だけでも8件目。玉と節子で間に合うだろうと身を引くというのです。岡安の台所を考えてのことかとシズは返すしかありません。斜陽の苦しさがあります。
 どうして漆原と富士子の話を並べるのか。嫌な予感がします。

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2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.com/

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