森博嗣、スカイ・クロラシリーズ考察(5)僕とは誰か-2
「”僕“とは誰か」について、僕の結論はこれです。
『ナ・バ・テア』僕=クサナギ
『ダウン・ツ・ヘブン』僕=クサナギ
『フラッタ・リンツ・ライフ』僕=クリタ
『クレィドィ・ザ・スカイ』僕=クサナギベースにカンナミが混ざる
『スカイ・クロラ』僕=カンナミ
『スカイ・イクリプス/スカイ・アッシュ』僕=クサナギ
・整形・性転換・クローンは一切なし。
・それぞれの物語の僕は一人だけ。
*これらは森氏が雑誌インタビューで語っていたことらしい。残念ながら僕はその雑誌を持っていないので実際の記事は確認できていないが、この前提ですっきり話はまとまるのである。
この説の最大のポイントは「クサナギ=カンナミ」つまり「カンナミはクサナギの中に生まれた別人格と」いうことである。
時系列的に真ん中にあたる『フラッタ・リンツ・ライフ』のクリタ以外、身体的には一人の人物のストーリーなのだ。
「一人の人間の中に別人格が生まれ、後に生まれた人格が元の人格を消し主人格になるまでの過程」を描いたのが、スカイ・クロラシリーズということである。
流れとしては、
① クサナギという人物にカンナミという人格が生まれ、クリタの死によりカンナミの人格が確立。
② クサナギの中にクサナギとカンナミ2人の人格が存在。
③ 元の人格であるクサナギを抹消し、カンナミ一人の人格になる。
④ 後日談として『スカイ・アッシュ』では、治療によりカンナミ人格は消えクサナギ人格が戻ってきている。
つまり
「クサナギ → クサナギ&カンナミ → カンナミ(→クサナギ)」
ということだ。
僕は正直なところ、この解釈にかなり自信を持っている。
だからこそ、刊行から17年も経った今(いまさら)ネット上に自説を発表しているのだ。
コロナ禍で読書の時間が増えた。数年ぶりに大好きなスカイ・クロラシリーズを読み直してみると、以前は考えもしなかったことがどんどん頭の中に浮かび、それぞれがスパッと結びついた。
話の構造はシンプルなのである。
長年の森氏ファンだからこそ、そう思う。森氏は数々の著書で二重(多重)人格の世界を描いてきた。この作品も例外ではない。むしろその頂点となるのがこのスカイ・クロラシリーズなのだと僕は捉えている。
5冊あるシリーズの中で真ん中の3冊目を折り返しとして、カンナミ人格がクサナギ人格を侵食(という言葉は不適切かもしれないが)していくのも収まりがいい。
次回以降で、もう少し詳しく掘り下げていこうと思う。
謎解きはまだまだ続く。