家出の帰結

 折角家出したので、気になっていたホテルでお一人様時間を楽しみながら、これをどうWIN-WINで着地させようか考えていた。
 じい様は、すっかり悄気て反省しているとのこと。でも、このまま帰ったら、また、元に戻るだけ、変化しない。今後のお互いの為に、誓約書を書いてもらうことにした。そして、夫を通して、舅に私が一番分かって欲しいことを伝えてもらった。
 「何も出来なくなっても、この世界に存在するもの全てに、存在そのものに意味があります。私の親友は、がん終末期にありながらも、一生懸命最後に残された食べて生きようとすることで、私に大切な事を教えてくれました。寝たきりになっても、ばあちゃんのじいちゃんを心配する優しい気持ちには、充分価値があります。たとえ、それすら伝えることが出来なくなったとしても、存在そのものに価値があるのです。じいちゃんは、役に立たなくなったら、死んだ方が良いと言いますが、決してそんなことはありません。じいちゃんもいつまでも、何かが出来る存在でいられる訳ではありません。ばあちゃんを大切にすることは、じいちゃん自身を大切にすることでもあります。私はもっとじいちゃんも、自分自身を大切に扱って欲しいんです。」
 これで、じいさんは少し分かってくれたようです。「おかあさんにありがとうと言っている」と夫がメールしてくれました。
 明日、もう一日お一人様時間を楽しんだら、名残惜しいですが、家に帰ります。

 同居して30年。初めての私の反乱は終わりました。

 プチ家出をしてみて思ったこと。本当に大切なものは、自分自身の信念であり、形あるものではないということ。


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