欧州放浪記_8日目
今日は移動日。LCCでパリへ向かうことにする。
お世話になったベコンツリーのお家。日本人としての矜持を世界に示してやるぞと、部屋を奇麗にして家をでる。
初日あんなに恐れていたベコンツリーの街並みとホストのラビさん。
1週間過ごした今、ものすごく名残惜しい気持ちが押し寄せる。初日から自分が成長したのか、その環境に順応できたのか、縁もゆかりもない土地で自分に生まれた気持ちが不思議で、これもまた旅の醍醐味の一つかもしれないと思う。
飛行機に乗り遅れまいと早めに出た僕はルートン空港に向かった。ローカルの空港だからか、周りにアジア人が少なく、殺風景な空港の雰囲気に飲み込まれ、気持ちが荒ぶ。日本人の友達へ頻繁に連絡を取る。バーガーキングでゆっくりしていると、隣に小太りの男が現れ、荷物持ちを頼まれる。
その後、小太りの男が帰ってきて、僕はチェックインカウンターへ向かう。
電車の感覚でゆっくりしていると、出発時間ギリギリであることに気づく。
慌てて荷物検査を済ませ、搭乗ゲートを聞いた僕は走ってゲート7へ向かう。心拍数があがりつつもそれをケアする余裕のない僕は懸命に空港内を走るものの、ゲートがすでにクローズされていることを知ることになる。
この旅一番のショック。時間を意識しなかった自分の愚かさと海外の空港でトラブルに見舞われた心細さで、気持ちが大きく動転する。とはいえ、駒を前に進めないといけないとチェックインカウンターへ戻ることにする。
もう帰りたい、なんでこんな思いをしてまで海外にいるのか、日本に帰って平穏に暮らしたいとの思いが自分の気持ちの太宗を占める。
人肌恋しかったのか、元いたバーガーキングへ戻る。するとそこに小太りのおじさんがまだいることに気づく。とりあえず隣に座り、飛行機を逃したことを伝える。次の飛行機は3時間後の19時の飛行機。たくさん残っている時間、海外の空港、まわりに自分を知るものはいない。心細さがマックスになる。大きなため息をつくと、隣のおじさんが笑って反応する。
そこからお互いの出生を語り合い、ネットフリックスを見始める。
少し気持ちが落ち着いた僕は、小太りのおじさんに話しかけ、ヨーロッパの観光地のおすすめを聞く。すると、おじさんがお前は何歳だ? 28歳。お前くらいの年齢はもっといろんな場所へ行って、いろんなもの見て、感じて、そういう経験をたくさんしろ。失敗してもよい。失敗はお前くらいの年齢は失敗じゃない。気楽にいけとの言葉をもらう。そのおじさんの英語を聞きながら、涙があふれ出る。
この旅のお作法、不安や孤独が生まれたとき、それを人との交流で埋め合わせ、旅の満足度(生きている実感)に昇華させることができた瞬間になった。
このおじさんの言葉は自分の人生の羅針盤となり、これからの自分の生き方を決める言葉になるのだろうと聞きながら考える。
旅をしないと得られないこの満足感と絶望感、非日常なこの時空間を泳ぎきることは時として億劫でつらく、日本に帰りたいと何度も思わせる。一方で日本の生活では絶対に味わえない貴重な経験の数々は自分の人生を必ず彩るものであるという確信が芽生える。旅を現在進行形で進めるときの気持ちとそれをあとで振り返るときの気持ち、きっとあとで振り返ったときにお前よくやったといってくれると信じて、この旅を続けることにする。
旅とは人生である、この言葉が染みる1日になった。
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