【漫画】『監獄学園』平本アキラが描く混沌『RaW HERO』(1巻)
こんにちは、ごみくずです。
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無為なコメントを避ける為にコメントのみ有料としているので、安心して読んでいただければ幸甚です。
今回ご紹介するこの漫画、エロ要素が多いので取り扱うか迷いましたが、映画のような作品なので取り上げる事にしました。
とは言え、エロや何かの一言で収まるような単純な話ではなく、様々な要素が絡み合って混沌としているので、紹介が難しいんですよね。
「とにかく読んで最終話迄みてよ」という作品です。
現在完結しており、6巻まで発売しております。
それでは見ていきましょう。
第十回目は『RaW HERO』1巻から
【第1巻の個人的な評価】
※5段階評価で普通が3。数字が少ない程低評価。
なお、エログロ評価は低い方が安心安全です。
評価★5
エロ★5
グロ★1
現在完結している作品ですが、私は元々、作者平本アキラさんの前作『監獄学園』のファンで、次回作に期待していましたので読んでみてとても満足でした。
「先生との未来…、想像していいですか…?」
恋する女学生。
そして象怪人風の男に、更に危険そうな全身タイツ姿の女性。
なんなのか?と思うかもしれませんが、
本作は基本線は「ヒーローとアンチヒーロー」の話です。
そして主人公は「三浦千秋」
中性的な容姿をしていますが、正義感が人一倍強い18歳前後の男性。
父は15歳頃に既に亡くなり、叔父との生活を断り、現在千春(中学生)と千夏(小学生)の弟二人と共に生活。
生活費は切り詰め、赤貧ですぐ先の未来も見えない中、就職活動を行うも、プライドの高さが要因なのか、焦ってブラック企業を選ぶ事による利回りの低さや人生の踏み外しを避けているのか、就職は全く決まらず。
お金が無いってホント辛いですね。
可愛い末弟千夏に癒されますが、可愛さではごはんは食べられず。
千夏は小学校に通いますが、シューズ袋は買い物ポリ袋。友達はタワマン住まい。兄の前では心配させまいとニコニコしていますが、内心辛い想いをしている事でしょう。
兄としてのプライドと、面目なさの狭間で今日も就職活動をします。
そして「今日こそは必ず就職する!」という大事な入社面接の日、千秋は面接会場に向かう電車の車内で、怪しい痴漢男を目撃。
本来の目的で最重要事項である面接を優先しようとしますが、千秋の「悪を許せない性質」により、本能的に間に入ってしまい、痴漢男を電車から降ろし問い詰めます。
しかしその痴漢行為がそういうプレイである事を知り、そんなクズ男のプレイを止めた事により大事な入社面接には遅刻する事が確定。報告とお詫びの為に掛けた電話もクズ男のせいで台無しとなり破談。
人生を台無しにされてしまいます。
絶望の中、その絶望の原因であるクズ男はある名刺を差し出します。
「君には向いていると思うぞ、正義の仕事が」
警察官のお偉いさんが電車でなにしてんすか・・・
千秋はその誰も恐れない正義感により、意外な所から人生が動き出していきます。
背景は「正管(セイカン)」と「特解」の対立
少し分かり辛い背景なのですが、この世界ではいつしか特殊能力が使える人間が生まれ、その力を政府が管理した事が発端で、社会との軋轢が発生しているようです。
政治団体のような「特解」が政府がブラックボックス化している情報開示を求めていますが、政府が悪いというよりは「特殊能力を利権化したいパワーゲーム」という所のようにも見えます。
「特解」には下部組織にカンパニーがあり、その活動を支えますが、当に良くある一般企業のような労働環境で、千秋と千春の口論でもありましたが、特解で働く事は容易です。
正義感の強さを買われ、特殊能力を持った「怪人」と戦う正管の只野にスカウトされた千秋。
しかし、千秋は特殊能力は全くない青年です。
只野から「特殊任務」を任されるも、面談しながらも女性を弄る只野が信じられず千秋はその場を去りますが、「給与は月100万円は行くのでは」とさらに怪しい事を言われます。
只野は信用できない。リスクも大きい。
しかしやはり金が無い。
弟たちは食うや食わずでどうなるか分からない。
崖っぷちの千秋は一歩踏み入れ、弟達の為に仕事を受けます。
正義感は人一倍強いが凡人の千秋が、只野から課せられた「正義の仕事」とはなんでしょうか?
おいおっさん
ヒーローと悪の組織と純愛を描いた映画のような日常漫画
先々話が展開していく中で見る事ができますが、同じ世界でみな生活しており、住処を隔離している訳ではないので、正体が分からない人間同士がなんとなく顔見知りで、何となくやり取りしていきます。
リアル路線でヒーローが存在する世界があったらこんなふうになるのか、という所も見所です。
そして、千秋はある人に恋をし、純愛を貫いていきます。
千秋の想い人はとても純粋で心の美しい繊細な女性でした。
そんな千秋も、あるきっかけで同性から想いを寄せられます。
クズでシチュエーションエロス好きな性欲の強すぎる只野も、何かをきっかけに自分の中に眠ったモノに気が付きます。
エロはありますが、どちらかというとハリウッド映画のような、セクシーとバイオレンスと、ドジな悪者たちと悪い正義の味方が集う純愛映画を観ているような感覚になるのが、この『Raw HERO』と言えるかもしれません。
性別とはそして正義とはなんなのか
本作は一見「ヒーローとアンチヒーロー」モノで、そこに強い正義感を持つ青年が女の娘に変装して潜入任務をする、という話ですが、読み進めていくうちに、「線引き(ボーダー)とは?」というのが大きいテーマではないか?という考えに変化し、そこに「ヒーローとアンチヒーロー」「強い女達と女になっていく男たち」が乗り、「今はクズでも危険を恐れず誰かの為に一歩踏み出せばヒーローになれる」というメッセージが織り込まれ、混沌とした世界に引き込まれていきます。
例えば、アンチヒーローである『特解』のメンバーの方が社会からあぶれた人々の職場となっているため、中にはクズもいますがそれぞれが人情味があり、対して警視庁管轄の『正管(セイカン)』については只野を始め少し信用の於けない人物が出てきます。
というかお察しの通り『正管(セイカン)』というのは「性感」に掛けているのではないかと思える程、只野や他のヒーローを始め、風俗店の雰囲気がでてしまうのが「どうしようもねえな」という呟きがでてもおかしくはありません。
かなり混沌としていて、このレビューだけで紹介する事は困難なので、とにかくラストまで読んで欲しい、という作品です。6巻までなんですよね。
叙述トリックと時間の前後の激しさに緊張感
かなり多用される叙述トリックも、時系列が入れ替わるのも、映像作品からの影響の強さを感じます。
前作の『監獄学園』でもそういう描写や表現は多々ありましたので、随分こだわっているな、という所感です。
変装での潜入任務の為、いつ発覚するか、という緊張感も魅力のひとつです。
そして怪人や悪の組織風の構成員が日常に同化するシュールさが、なんとなく『アゴなしゲンとオレ物語』を思わせます(まだ全巻読み終わってませんが…)
ちなみに、『アゴ無しゲンとオレ物語』と言えば、作者平本アキラさんのデビュー作ですが、以前はこんな絵柄だったんですよね。
しかしまあ、すごい絵柄の変化ですね。
そうはいっても、以前から描き込み具合は拘りがありましたね、ゲンさんの髭とか胸毛とか。。
『RaW HERO』、少しエッチかもしれませんが、エロとバイオレンスの外国映画に慣れ親しんでいれば面白く読めてしまうので、まず読んで欲しいです。
また更新しますので、次もお読みいただけますと幸甚です。
それでは良い一日を。
なお、コメントだけ有料にさせていただきます。
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