夢の中で出会った名前も知らない貴方へ
わたしが海の底にいるときに手を差し伸べてくれた貴方。お元気ですか。
泳ぐことは苦手ではないのに、その日は何故だかどこまででも沈んでいけるような気がした。海の底に行きたくて、そこから空を見上げたくて、どこまでも進み続けた。
気付けばわたしは砂浜に横たわっていて、わたしを覗き込んでいる貴方と目が合った。太陽の光でほんのり透けるあなたの目はとても綺麗だった。
そんな夢から覚めたときにはもう、貴方と話した内容や貴方の声すら全然わからなくって。ただわたしが覚えているのは、貴方のその綺麗な目と、わたしの全てを包み込むようなその暖かさ。
貴方は誰なの?どこで、何をしているの?
どうしてわたしの夢の中にいたの?
たった一度、夢の中で出会った貴方のことが忘れられないの。名前も、声もわからないのに。
また会いたい。貴方に会ってその暖かさで抱きしめてほしい。
次はわたしが会いに行くわ。
明日、貴方が手を差し伸べてくれた、あの海の底で待っています。