今日の鉄道の色(4)流鉄電車の色
常磐線の馬橋駅、その片隅にある小さなホームに2両編成の電車が止まっている光景を沿線の方なら一度は見たことがあるかもしれない。
流山までわずか6駅という小さなローカル私鉄、名を流鉄という。
もっとも、この流鉄という会社、ほんの少し前までは総武流山電鉄という社名であったので、
そちらの方が通りがよいというファンの方もおられるかもしれない。
今日は、そんな流鉄電車の色を取り上げていこう。
流鉄といえば「編成ごとにカラーが違う」
今現在、流鉄の電車といえば「編成ごとに違った色の電車が走るカラフルなローカル線」という印象を持たれているファンの方が多いと思う。
現在流鉄には2両編成5本、合計10両の電車がいるが、それら5編成すべてが違った色をまとっているのだ。
このカラー化が始まったのは1979年。
世界情勢に目を向ければニクソン政権による米中国交樹立、イラン革命が起きた年であり、
国内ではソニーの「ウォークマン」が大ヒットを飛ばしていた。
ハリウッド映画では「エイリアン」が、イギリス映画では「007 ムーンレイカー」が封切られ、
そして現在まで続く人気ロボットアニメ「機動戦士ガンダム」の初回放送(最も1979年当時は視聴率不振であり52話予定だったところ43話での打ち切りであった)があった年でもある。
さて当時の国内鉄道業界はというと、この年の末に国鉄が宮崎県のリニア実験線において
ML500形リニアで速度記録504km/hを達成、世界の鉄道で初の500km/hオーバーという快挙を成し遂げた。
ちょうどこの年といえば、西武鉄道に新101系が登場し(その後、この新101系も流鉄に関連してくるが後で述べる)、
入れ替わりに旧501系などの旧型電車が置き替えられた時期である。
この旧501系が流鉄に入ってきて、同線初の20m級電車となるのだが、第1編成の「流星」は当時の流鉄の標準色であったインターナショナルオレンジに白帯という姿で登場するも、
続く第2編成はスカイブルーに白帯をまとい「青空」(ほどなくして「流馬」に改称)という名で登場した。
これを皮切りに、流鉄は現在に至るまで編成ごとに色を変えているのである。
流鉄電車の色
ここからは、実際に現地の車両および千葉県松戸市の「昭和の杜博物館」、埼玉県さいたま市の「ほしあい眼科」にて保存中の車両について
日塗工色見本帳(2021年L版)をもとに調査を行った。
つまり高性能車両群(2000・3000・5000形)の色ということになるが、
一部は実車がほとんど消滅したに等しいものもあるため推測ということになることをご容赦願いたい。
2000形2001編成「青空」(2代)
もと西武801系803編成の電動車であるモハ803・804のユニットに同編成の制御車であったクハ1803・1804の前頭部分を取り付けて誕生した「青空」(クモハ2001+2002)は流鉄初の冷房車であり、高性能車でもある。塗装は紺色に白帯であった。
廃車後、整備されて公園に設置などといった話もあったようだがとん挫し、その後前頭部分だけが切り出されて
群馬県安中市の鉄工所に引き取られたそうだが、野ざらしになっており車体外部の色も相当褪色しているものと思われる。
そのため同編成についてはあくまで憶測の域を出ないが、以下の色彩ではないかと推定した。
2001編成導入時点ではまだ日塗工の番号も旧番号であったはずで、これに準拠している。
一方の白帯は、以後に登場する各編成の白帯と共通してN 9.3という色が使われている。
「青空」を名乗る編成は当代で2代目であった(初代は先述の通り、ほどなくして「流馬」に改称)。
2000形2003編成「明星」
こちらの種車は西武701系の745編成、モハ745にクハ1745の前頭部分をくっつけてクハ21+モハ2101+クモハ2003として竣工。
ウィキペディアでは「柿色」と書かれているがどう見ても車体の色は柿色のそれではない。
むしろ朽葉色か、黄土色といった方が適切な色である。
こちらについては前頭部分が「ほしあい眼科」に置かれており、
眼科の看板ということもあってか塗装も定期的に塗り替えているようでかなり保存状態が良い。
柵越しで、やや離れた位置での測色になったが以下のとおりである。
この頃、1995年になると日塗工も番号体系を刷新しており、現在まで続く「○○-××△」という体系となっているため、おそらくはこの色であろう。
なお、「明星」の名を持った編成はこの代限りとなっている。
2000形2004編成「流馬」(2代)/5000形5001編成旧塗装「流馬」(3代)
こちらの種車は西武801系の809編成であり、モハ809にクハ1809の前頭部をくっつけてクハ22+モハ2102+クモハ2004の3両編成として竣工。
同編成に使われていたスカイブルーについては現在も流鉄線の5002編成が帯色として同じ塗料を用いていると思われる。
「流馬」は2004編成で2代目であったが、
5000形の5001編成が全く同じ色で登場していてこちらが3代目となっていた。
なお、5001編成の現在の姿と愛称、および種車については後述するのでここでは割愛させていただくことをご容赦願いたい。
2000形2005編成「なの花」(2代)/5000形5005編成「なの花」(3代)
2000形最後の編成となったクモハ2005+2006「なの花」は西武701系757編成が種車であり、
モハ757・758にクハ1757・1758の前頭部分を接合させて誕生した2両編成。
1200形1210編成(クモハ1210+クハ81)に次いで2代目の「なの花」となったが初代に比べて明るい配色となり、より菜の花らしい色合いになった。すなわち菜種色と呼ばれる鮮やかな黄色に黄緑の帯である。
なお、5000形5005編成(クモハ5105+クモハ5005)も全く同じ塗装で「なの花」の3代目を名乗る。
こちらの種車は西武新101系の271編成(クモハ271・272)である。
3000形3001編成「流星」(2代)/5000形5002編成「流星」(3代)
3001編成は西武旧101系135編成が種車で、モハ136にクハ1136の前頭部分を接合して誕生したクハ31+モハ3101+クモハ3001の3両編成、
5002編成は西武新101系275編成が種車でクモハ5101+クモハ5001の2両編成である。
初代「流星」(クモハ1201+サハ61+クモハ1202)はインターナショナルオレンジと呼ばれる赤みの強い色であったが、
2代目からは黄みが強くなり、ゴールデンオレンジともいうべき色合いとなっている。
なお、5002編成の帯色は当初3001編成同様の白(N 9.3)であったが、その後塗り替えられ、現在はスカイブルー(日塗工69-50T)となっている。現在の青帯はおそらく「流馬」用の色を流用したものであろう。
3000形3002編成「若葉」(2代)/5000形5004編成「若葉」(3代)旧塗装
3002編成(クハ32+モハ3102+クモハ3001)はもと西武旧101系の131編成でモハ132にクハ1132の前頭部を接合した3両編成、
5004編成(クモハ5104+クモハ5004)はもと西武新101系の287編成である。
初代「若葉」(クモハ1208+サハ65+クモハ1209)とは違ってかなり黄みが強くなった黄緑色であった。
現行の「なの花」の黄緑色と同じ塗料(日塗工35-70V)であったと思われる。
5000形5001編成新塗装「さくら」
種車は西武新101系の273編成でクモハ5101+クモハ5001の2両編成。
当初は「流馬」の愛称であり、スカイブルーに白帯となっていたが、2018年の全般検査時に塗装と愛称を変更して「さくら」を名乗るようになった。
桜の花びらを思わせる淡いピンク色に濃いピンク色の帯であるが、ヒューが相似である点が面白い。
もっとも調査時、当該編成は車庫に押し込められており、かなり離れた位置での測色となったためここに掲載の色見本は正確さを欠く。後日再調査をしたいものである。
5000形5003編成「あかぎ」
もと西武新101系の277編成でクモハ5103+クモハ5003の2両編成。
初代(クハ71+クモハ1301)に次いでこちらが2代目を名乗る。
塗装はえんじ色に白帯である。
さて、5003編成「あかぎ」と5005編成「なの花」の2編成はあることを行って大いに話題となったことがある。
きっかけはクモハ5005の不具合発生に伴う応急修理であり、片割れを失うこととなったクモハ5105にちょうど全般検査が明けたクモハ5003を連結した混色編成が誕生したのである。
当初は名前が決まっていなかったが、黄色のクモハ5105をオムライスのご飯をくるむオムレツと付け合わせのレタス(あるいはパセリ、はたまたグリンピース)に、赤いクモハ5003をトマトケチャップになぞらえて「流鉄オムライストレイン」と名乗ったのである。
その後クモハ5005の修理が完了、さらにクモハ5103の全般検査も完了したが混色編成が思いのほか好評だったためにこちらもそのまま編成を組み2022年から「流鉄オムライストレイン2号」として運転を開始した。
オムライストレインは両編成とも2023年8月に運行を終了し、現在はもとの編成に戻されている。
5000形5004編成「若葉」新塗装
さて、5004編成の種車については先述したが、2022年より同編成は翡翠色に濃緑色の帯を締めた新塗装に変更されている。