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『エッセンシャル思考』を読んで

先日、『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』(グレッグ・マキューン)を読み、忙しなく過ごしている今日この頃の生活を見直すきっかけとなりました。

本書は、タイトルから想像できるように、本質的な事柄に注力し他の無駄なことを削ぎ落とすことの必要性とその方法を教えてくれ、自分のこれまでの知識の中では、『7つの習慣』(スティーブン・コヴィー)や「less is more(ミース・ファン・デル・ローエに関する言説)」とリンクするものがありました。

その中で、なんとなく承諾してしまうような事柄をキッパリ断ることのメリットやその方法、睡眠の重要性、現状維持バイアスによる人間の習性など、多忙でありながら成果を上げられない状態からエッセンシャル思考になるための多くの視点を教えてくれるわけですが、その中で最も自分に刺さったのは、定量的で明確な目標を定めることの重要性です。

 世の中で唱えられる、目標やコンセプト、ビジョンといった類のものは、その多くが抽象的で質的なもので溢れています。

 例えば、「明るく活気のあるまちづくり!」「大金持ちになりたい!」「豊かな時間を過ごします!」みたいなものです。これらの目標はその達成度を測り物差しがないため、結果を当事者ですら評価することがままならない状態に陥ります。ゆえに、どれだけ努力しても満足しきれないことだったり、客観的には大した成果を上げていなくてもまあ多少は目標の状態らしくなったということで満足してしまうことができます。つまり、質的な目標に対して、量的な成果を上げても満足できる状態にはならいということです。
 このような状況を回避するためには、目標を量的に、それまでの過程を質的に捉えることが重要なのかなと思います。例えばさっきの例を量的な目標に変えてみると、「1日に平均○○人が観光にくるまちづくり」「貯金を1億円つくります」「□年以内に行きたいとこリストの××箇所に行きます」みたいな。

 そうすることによって、最終到達点の現状の差分が明確になり、またその差分を埋めるために必要な打ち手が明確になります。この段階になって初めて、質的なアプローチというものが意味を持ったものになるのではないかと感じました。今まで、楽をしてそういった自分の努力や目標との差分を定量的に計るということを避けてきていた自分がいるので、変えていこうと思います。


 ただ一方で、とても近代的で成長主義的な面があるなということを考えながら読まなければいけない本だなということも感じました。
人間にはそれぞれ人生に目標や意義があって、それを達成する、より成果を上げることに価値があるという基本的な考え方は、人間を動物や自然から切り離し特別な存在として捉えている前提があり、その考え方が一般化したのは西洋思想が流入した明治以降の話ではないかと思います。
 動物一体一体が生きる意味を見出して生きているか?と問われると、生まれたから生きているというのが最もしっくりくる答えかなと思いますが、ヒトもその動物の一種だと捉えると、生まれたから生きているだけで目標も何も持たないというのもありだと思います。そのような価値観を無意識のうちに排除することは避けなければなと思います。
 

 逆に、自分の人生の目標や生きる意味を盲信しすぎるという恐れもあります。戦争なんかはまさにその極め付きだと思います。

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