【ショートショート】 厨房にて #友情の総重量#粒状の総料理長
「お前の顔を見てるだけで蕁麻疹が出やがる」
腕にできた粒状の赤い斑点を掻きむしりながら、苛立たしげに僕を見下ろした。
総料理長のストレスの種は、もっぱらグスな見習いの僕だった。
軽度の障害を隠して働いてきたけれど、そろそろ限界なのかもしれない。
同じ学校を出た同僚の柏木は、そんな僕を心配していつも見えないところで助けてくれた。
「あんな奴、死ねばいいのに」
僕のどんなところが好きなのかよくわからないが、柏木の僕に対する友情は、時に重たく感じることもあった。
毎日のように総料理長からは怒号がとんでくるので、僕自身は麻痺していたつもりが、自覚している以上に体は悲鳴を上げていたようだ。
怒られる度に何かが降り積もって行き、いつしか重量を持って僕を蝕んでゆくように。
「ねえ、こっち来てみて」
柏木に呼び止められて、厨房に戻ってみると、腹に包丁が突き刺さった総料理長が横たわっていた。
「どう?嬉しい?」
柏木は純真な眼差しを向けて囁いた。
(430字)
〜あとがき〜
2週続けて参加させていただきました。今回は、裏お題を絡めて作ってみましたが、またしても怖い話を書いてしまってすいません…
これからもボクらしく書いて行きたいです!!