【ショートショート】7月6日　#彦星誘拐#織姫妖怪

彦星誘拐指令が発せられたのは一昨日のことだ。どうやら、今年こそは織姫と会わせないよう、俺を監禁するのが目的のようだ。
そろそろ終わらせるべきだと識者からの意見が殺到して、俺のもとに意見書が届いたのだが、頑なにこれを否定した。ならば実力行使というわけか。面白い。やれるものならやってみろ。
しかし、なんだって俺の邪魔ばかりするのだろう。
「奴は見つかったか？」
見つかるはずがない。昨晩から俺は、天の川の中にいるのだ。織姫の待つ対岸は目前に迫っている。
艶やかな着物の美しい女が手を振っている。織姫に間違いない。七夕は明日だが、一日くらい大目に見てもらおう。
俺は命からがら、やっとのことで対岸にたどり着いた。織姫が静かな笑みを浮かべて俺を待っていた。
「一年ぶりだね、やっと会えたね」
ところが織姫の手を握ったそのとき、みるみると醜悪な妖怪へと姿を変え…
「誰だ！お前は！」
握られた手の力は、もはや女のものではない。
7月6日の夜のことだ。

(410字)

〜あとがき〜
たらはかにさんの毎週ショートショートに参加させていただき5週目！いつも楽しませていただいてます。ありがとうございます。
今回も表裏ふたつのお題を使って410文字でまとめてみました😁