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50歳のリアル⑤ 暑がりの寒がり
ところで、ボクは暑がりである。
「今日も暑いねぇ」
気を抜くと一日中、口癖のように繰り返してしまうのだが、周りの同僚たちはカーディガンを羽織ったまま涼しげな薄笑いを浮かべ、まったく共感の気配がない。
先日などは、バッチリとネクタイまで締めたスーツ姿の同僚が、汗ひとつかかずに黙々とデスクワークをしている側で、ポロシャツのボクは汗だくでアイスを食べていた。
そんな暑がりのボクは冬場に関しては、めっぽう寒がりである。
カイロをベタベタ貼りまくった上、デスクワーク中はUSB電気ブランケットは欠かせないし、あまりに冷え込んだ日には気泡緩衝材(いわゆるプチプチ)を電気ブランケットの上から何重にも重ねて寒さを凌いでいる。
気泡緩衝材のカサカサッ音がする度に、事務員たちの苦笑を誘ったものだ。
更に貧乏ゆすりなどやらかした日には、真顔で「やめてください」と冷ややかに言われたりもした。
そう、ボクは暑がりの寒がりである。
自分は根っからの暑がりの寒がりだと吹聴していると、
「頼人さんは、わがままだなあ」
と判で押したように決まって呆れ顔である。
せめて、どちらか一方にしておきなさいよ、と言うのだ。
そう言われてしまうと、どうも腑に落ちないのが50歳のオジサンだ。
ボクなりの理屈を述べるなら、暑がりの寒がりは、暑がりとは寒がりであり、暑がり=寒がりということなんである。
外気温に対して、敏感に反応しているだけなんである。
ただ単に、素直に反応しているだけなんである。
皮膚の感度が高いというのか、四季のワビサビを愉しんでいるというのか、
少なくとも何も感じることのできない鈍感な人間とは一線を画すのだ。
ボクから言わせれば「寒がりだけど暑がりではない」あるいは「暑がりだけど寒がりではない」という人間の方がむしろワガママなんである。
外気温に対してツンデレしているではないか。
それに、冬場に寒がりを宣言したばかりに、昨今の酷暑に暑いと言えなくなるのは、あまりにも窮屈ではないか。
この真理に気づこうともせず、思考停止状態に陥っている人間から、わがままだなあ、と一方的になじられるのは、誠に心外というよりほかにない。
・・いづれにしても。
暑いも寒いも心象に帰することが大きいならば、本来このような議論は不毛であるのだが。
オジサンになると理屈っぽくなるのはなぜだろう?
論破すればするほど嫌われるのに。
そんなことはとっくに気づいているはずなのに。
せめて、笑いのとれる屁理屈オジサンになりたいものだ。
これも50歳のリアル。