(短編) 通行人 山田三郎
「おめでとうございます。」
「えっと…。あの…。僕って…。」
「はい。殺されました。」
「ですよね。あの…。おめでとうって…。」
「はい。見事ご当選されました。今から説明に入りますがよろしいですか。」
「はぁ…。」
「はい。人間は死に過ぎているので、調整の為、我々は必要に応じて時々人間を生き返らせています。今回の調整はあなたがご当選されました。ご理解いただけましたか。」
「つまり僕は生き返るということですか。」
「はい。その通りです。では、こちらにサインを頂けますか。」
「あの、ちょっといいですか。」
「はい。何かご質問ですか。」
「僕殺されたじゃないですか。捕まった犯人はどうなりますか。」
「はい。生き返りになりますので、殺人事件は無かった事になります。」
「待って下さい。奴は見ず知らずの僕を突然めった刺しにしたんですよ。それを無かったことになんて。」
「はい。ご不満でしたら、辞退されますか。」
「それは…。」
そして僕はベッドの上で目が覚めた。
「おめでとうございます。」
「クソ。あの野郎も生き返ったのかよ。また俺のことめった刺しにしやがって。せっかく、捕まる覚悟で刺される前に刺してやったのに。」
「どうされますか。辞退されますか。」
「いや。また戻してくれ。次こそあの異常者を俺が止めてやる。」