(短編) 二番目の女
「じゃあ、行って来る。」
「いってらっしゃい。」
他の女に会いに行く夫の後ろ姿を、私は静かに見送った。
「やっぱり会いに行くの。」
昨日の夜、耐え兼ねた私は布団の中で夫に聞いた。
「決まってるだろ。何を今更。」
目を閉じたまま答える夫。
そう、これは決まっていることなのだ。
次の朝には夫は私の元へ帰って来る。
「お帰りなさい。」
甘い夢から醒めきらないままの夫は、私に気付くと憐れみの眼差しを向けた。
「ただいま。」
また始まる私たちの二人の日々。
永遠の二番目だとしても、次の七夕までは彼は私のもの。