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「ゲーム」の世界を「さんぽ」する


『ゲームさんぽ』という企画をご存知だろうか。

本企画はYoutubeでゲーム実況動画を投稿している「なむ」さんがさまざまな分野の専門家たちといっしょにゲームを「さんぽ」し、いろいろな視点からゲームの世界を、あるいは現実の世界を紐解いていこうというところから始まった。

○ゲームさんぽとは  
ゲーム実況者「なむ」が世の中のいろいろな人とゲームを「さんぽ」して世界の見え方の違いっぷりを学ぶゲーム実況シリーズとして2016年頃から活動を始める。現在は誰でも参加できる「みんなのゲームさんぽ」コミュニュティの構築を目指して迷走中。
(Youtube)https://www.youtube.com/channel/UCCj7tBSvrrG8_aErflpNgyQ
(ホームページ)https://www.saynum.com/

ライブドアニュースとのコラボをきっかけに現在はライブドアのYoutubeチャンネルの看板企画として扱われている。

2019年に「なむ」さんがライブドアニュースとコラボしたのをきっかけにSNS上などで話題になりはじめ、現在も続く人気企画となった。

私自身も2020年ごろからその存在は耳にしていたものの、私は流行りモノ、特に流行の動画や映像といったコンテンツの視聴があまり得意でなく、1年以上もの間「いつか見たいな~」と言いながら時間を持て余していた。


しかし、先月ついに重い腰を上げて見始めたこの企画は、想像以上の面白さだった。

本記事では、『ゲームさんぽ』の中でも特にお気に入りの動画をいくつかピックアップしながら、私自身のゲームへの感想も少し交えて述懐していこうと思う。


『アサシンクリード オデッセイ』×古代ギリシャ研究家


かなり好きでリピートしている動画。

『アサシンクリード オデッセイ』は暗殺者としてテンプル騎士団の陰謀と戦うアサシン教団を描くアサシンクリードシリーズの作品で、今作は古代ギリシャを舞台としている。

今回のゲストは古代ギリシャの歴史について研究している藤村シシンさん。
研究者や学者といった肩書とは良い意味で裏腹な軽快なトークに驚かされ、しかし圧倒的な知識量と古代の文化へのリスペクトの深さにも舌を巻く。

動画内でも触れられているが、古代ギリシャの歴史をまるでそばで見てきたかのように語る様がとてもおもしろい。
何千年も前の出来事が日常の一部として包摂されている、そんなシシンさんの一面が垣間見えるようで大変興味深い。



『Cyberpunk2077』×CGアーティスト


私がいちばん最初に見た『ゲームさんぽ』の動画。

『Cyberpunk2077』は2020年12月10日にポーランドのゲーム開発企業CD Projekt REDから発売されたオープンワールドRPG。
サイバネティック(義体化)が浸透した近未来を舞台に主人公"V"が陰謀に巻き込まれるさまを描く。
同社は国内外でにわかに話題となっていた『ウィッチャー3』の開発も手掛けており、ゲームの緻密な作り込みから『Cyberpunk2077』もまた大きな期待を寄せられていた。

本作はとにかく異常な物量が特徴で、3DCGでビルの林立する街や、通行人やモノなどのたくさんのオブジェクトを描画するのも一苦労といった具合にPC(あるいはコンシューマー機)への負荷がとんでもなく、コンシューマー機が次世代機への移行期間中だったこともあり(当時の)現行機版(PS4/XBOX ONE)の販売が返金対応に発展するほどだった。

ゲームの紹介が少し長くなってしまったが、本動画を見てまず思ったのがゲストの榊原寛さんの経歴がとても個性豊かで面白い。
動画の冒頭でも本人の口から説明されている通り、CD Projekt REDでCGデザインを務める榊原さんはもともと大学で歴史や民俗、文化といったことを学んでおり、実際に海外での建築装飾の調査を行っていた経験が今のCGデザインの仕事に活きているという。

正直、経歴からして異色すぎる、というのが最初に出た感想だった。
タンザニアで文化を学んで今CGの仕事をしている、というような経歴を持つ知人は(当然なのだが)私にはいないし、しかしそういったある種の非凡さを私はとても興味深いとも思った。

『Cyberpunk2077』を開発者側での視点だったり、CGデザインを手掛ける人間にとってのあるある(?)だったりと、ただゲームをプレイしているだけでは気づけないポイントや、私の知らない世界を知れたようでとても印象深かった。

ちなみにこの動画ではゲーム開発全般に通じるであろう話題も多く飛び出すのだが、少し前に視聴したアニメ『NEW GAME!』オーバーラップする部分があったのもとても鮮烈だった。



『Detroit: Become Human』×精神科医


『ゲームさんぽ』の中でも比較的初期の頃の企画。

『Detroit: Become Human』はアンドロイドが普及した近未来を舞台に、人工知能の自我の芽生えを3人のアンドロイドの視点から描く。

『デトロイト』というゲームについて私自身好評なことを耳には入れていたものの、実際にゲーム画面を見たのはこの動画が初めてだった。
アドベンチャーゲームが近いジャンルだが、アンドロイドならではの状況分析の演出のスマートさがゲーム性とすごくマッチしており、ゲーム自体にもすごく興味をそそられる。

今回のゲストの名越康文さんもトークが巧みで、「常に仮説を立てて出来事と相対する」というスタンスは人間の心理分析以外にも応用できそうだと感じた。
ただ目の前の出来事を受け入れるだけだと実感が湧かないときもあるかもしれないが、仮説を立てて物事に臨めば、たとえそれが外れていたとしても浮き彫りになった違いから新しい発見があるかもしれない。
動画の主旨とは少しずれるかもしれないが、自分の中に既に形作られていたそういう考え方を改めて言語化するいいきっかけとなった。


『ABZU』×水族館飼育スタッフ


『ABZU』は『風ノ旅ビト』『Sky 星を紡ぐ子どもたち』で知られるThatgamecompanyの作品。
『風ノ旅ビト』では砂漠を歩む人を、『Sky 星を紡ぐ子どもたち』では大空を飛ぶ人々をそれぞれ描いていたが、本作『ABZU』では海中の美しい景色を描く。

ちなみに私自身は『ABZU』はもともと癒やし系のゲームという触れ込みでプレイしたのだが、海というものがなんとなく好きな私にとって本作はすごく居心地の良いものだった。
美しい海と差し込む太陽の光、自在に海中を泳ぎ回る魚たちと癒やし効果は抜群だ。

今回のゲストはサンシャイン水族館の飼育員である先山広輝さん。
『ABZU』では実在する魚や絶滅種も描かれており、そんな海をさんぽする本動画では先山さんの生き物に対する愛をすごく感じられる。

本作を私がプレイしたのはけっこう前のことなのだが、動画をざっくり見ていてもけっこう内容が抜けているなと思ったので近いうちにまたいちからプレイしたいと思った。

ちなみに先山さんは『あつまれ どうぶつの森』の水族館エリアのさんぽ動画にも登場しており、こちらでも生き物の解説などを聞くことができる。こちらも合わせてぜひ。



『ピクミン3』×俳人


『ピクミン3』は”ふしぎないきもの”ピクミンとともに異星からの脱出を図るゲーム。

本作は私は名前を聞いたことがあるのみで未見なので、動画を通してみるピクミンの動きはとても新鮮だった。

今回のゲストは俳人の関 悦史さんと阪西敦子さん。
ゲームという情景からひたすら自由な俳句を繰り出す阪西さんと、鋭い視点で淡々としたツッコミを入れる関さんの掛け合いが面白い。

ピクミンという架空の生物を取り扱うこともあって、季語として使いにくいものばかりかと思いきや案外言いようによっては使えるとのことで、日常や非日常、あるいは架空の存在の中にも豊かな情感をもって向き合う俳人たちの視線を感じ取ることができた。



おわりに


今回は『ゲームさんぽ』の中から5本の動画を紹介した。

いずれも専門的な知識を小気味よいトークに乗せて解説してくれるのでとても面白く見られるものばかりだ。
ライブドアニュースの『ゲームさんぽ』だけでもほかに100本を越える動画が控えており、いろんな世界に興味が湧いた人たちを長い間楽しませてくれるだろう。

こうして書いていて改めて思うのだが、このシリーズはやはり自分でプレイしたゲームの「さんぽ」を見るときがいちばん面白い。
たとえば今回紹介した動画の中で私が実際にプレイしたゲームは『Cyberpunk2077』と『ABZU』なのだが、自分の目で見たり実際に触れたりしたゲームに別の視点が加わるというのはすごく貴重な経験なのだと改めて思った。

加えて、『アサシンクリード オデッセイ』や『デトロイト』、『ピクミン3』、ひいてはギリシャ神話そのものや心理分析、俳句や日本語そのものととにかく幅広い分野への興味をそそられた。

この世界はまだまだ自分の知らないものであふれている、そういう実感を得ることのできるとても良い企画だなあとつくづく思う。


本記事が『ゲームさんぽ』やゲーム、またゲーム以外のなにかへの関心を持つきっかけになれば幸いだ。


最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは今回はこのあたりで。

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