不死者ロスがとまらない~しをちゃんとぼく~
大好きなマンガが終わってしまった。
最終回が掲載されたのは5/8。わたしはその日も多大なショックを受けたが、その後もなんだかんだでおまけが続いていたので「おまけ分だけで続巻が出てくれるかもしれない」とか腑抜けたことを考え……
7/10の更新で『しをちゃんとぼく』のおまけ更新は終了してしまった。
更新されていたおまけは、最終回に合わせて発売した単行本2巻の販売促進のためだったそうだ。わたしが甘えた考えを持っていたせいで、何もしなかったせいで更新が終わってしまった。間違いだった。お前はいつもそうだ。あるかもわからない希望によりかかって、自分では何もしない。そのせいで失う物の大きさをお前はリアルに想像していたか。
言い訳をしたい。
『しをぼく』はほのぼのグロコメディである。
どうやっても死なない不死者の「しをちゃん(死を失いし者)」と、小学生の「ぼく」のほのぼの日常マンガなのだが、どうやっても死なないせいで注意力が備わっていないしをちゃんがしょっちゅう酷いケガをしては再生するのでちょっとグロくなってしまうというわけ。なので、ドタバタギャグというよりかは、ほのぼのコメディといった内容だ。
しをちゃんはあまりにも長く生きている上に注意力散漫で、性格もちょっとぼーっとしており、はっきりした出生の記憶なんかもない。
なので、こういう題材にありがちな「人間だった頃の記憶」とか「過去の確執」「寿命の違う人間との辛い恋」なども特にない。というかあるけどシリアスにならない。昔から解剖されたり魔女狩りや吸血鬼狩りに巻き込まれたりして酷い目にはあっているのだが、本人が気にしていないので悲壮感に欠けているのだ。
本人はむしろ自分以外の全生物が持っている「死」に憧れている一面もあり、お墓の写真や死を連想するものを集めていたりする。メタルTを集める不死者は可愛い。流行が早すぎて常に少し前の時代の服を着ているのに、唐突にメタルTを来て出てくるのでずるい。ちなみにTwitterの更新告知では色々な服装のしをちゃんが見られてお徳だ。
しをちゃんの独特の人柄のおかげで凄惨な事件がかなり回避されているのもあるし、そのゆるさが最高である。
そうやってあらゆる時代をゆるく過ごしてきたしをちゃんと現代で友人になったのが小学生のぼく。ぼくが一話で道端で草刈用の鎌が頭にぶっささったしをちゃんを見かけ、救急車を呼んだことがきっかけで二人は友達になるのだが、このエピソードがもうかなり良い。
最初のころは、しをちゃんの不注意にいちいち驚いたりしていたぼくだが、徐々にスプラッタに慣れてツッコミが戸惑いよりやさしさになってくるのも子供特有の適応力でいいコンビである。
サブキャラとして、世界制服のため、しをちゃんに不死の秘密を聞きに来て幹部に誘う「力を求めし者(ちかもとさん)」や、しをちゃんの旧友?の「名義の者」さんもとてもいいキャラで、なんというか世界が優しくてほっとする。
悪辣そうなキャラが出てきてもしをちゃんがポンコツすぎてシリアスに振り切れないのが、しをぼくのいいところだと思う。
わたしの好きな回は「水没する回」や「しおりを挟む回」がやはりイチオシだが、「ずっと感電していた回」や「ガラス売り場に入ってしまった回」も好きだし、まあ、全部好きだ。
お試し読みがしたくなってきた方はとなりのヤングジャンプで1~3話が読める。
しをちゃんは不死者で、ぼくは徐々に育ってはいるが、まだ小学生だ。だから、このマンガも永久に続いてくれるのではないかとわたしは思ってしまっていた。
最終回はもちろんとてもよかったが、やっぱりぼくもちかもとさんも命ある人間だからいずれはしをちゃんの元を去るしかないわけで、めちゃくちゃ寂しい気持ちになった。そのあとでおまけの更新があるのでそれもまた見方が変わって寂しさがあるし、単行本2巻のおまけもなんだか切ないかんじだ。
失って初めて辛さがわかるというのは本当にこのマンガで言う「死を有する者たち」特有の過ちというかんじがあるが、今本当にそれを味わっている。
もっと読みたかった……本当に……
ところで、しをぼく作者、T長先生はこのようなツイートをしておられる。
赤字? この良作が赤字? 信じられない、本気で無理。マジでそれは避けたい。むしろクソバズって重版につぐ重版になってほしい。
というか、単行本は、すでに公開終了している話だけでなく、書き下ろしやおまけがけっこうぎっしり入っているので絶対に手に入れて欲しい。小ネタ集もついてくるので今までwebで読んでたよ~という人にもかなりおすすめ。
あらためて、1~3話のためし読みはとなジャンにて。
単行本1、2巻はお近くの書店でご予約いただくかAmazonでご購入ください。
読んだことない~という方は、今からでもいいので、しをぼくをお楽しみください。
T長先生がしをぼくの続きおまけを描かれる機会があるにしろないにしろ、また、次作の構想を練るにしろ、絶対に楽しみである。
次は絶対に間違えないぞ……
【追記】
バナーがあったほうが人目を引きやすいそうなので、がんばってかきました。